クラッシュ・ウェスタン


リボルバーさん作

ENDING

早朝のアップルタウン。今までの激闘が嘘のように思えるほど街は静まり返っていた。
避難のために街を離れていた住民たちも昨夜にはぞろぞろと帰ってきており、皆この時間帯にはぐっすり眠りについていた。
町のはずれにある墓場。死者などほとんど出たことの無かったこの町に、新たな墓標が二つ立てられた。
墓標の前にはビロードが使用していたブラックホーク、そしてダルヴの使用していた真剣が置かれていた。
二人の葬式は昨夜住民が帰っってきた後、村長の家で行われた。家の中には悲しいムードが広がっていた。
墓の前でクロックが目をつぶって手を合わせていた。
「クロックさん、ここにいたのか」
そう言ってクロックに声をかけたのはポトリゲスだった。
「ポトリゲスさんか。墓参り、しとこうと思ってな」
「俺様たちの戦いもこれで終わりなんだよな」
「ああ、でも・・・」
クロックは下を向いた。実はあの時、いくら捜索してもクラッシュの姿を発見することができなかったのだ。
「クラッシュのことか」
「そうや・・・あいつのことやから死んでへんと思うんやけど・・・」
「だな。あの男が死ぬなんて考えられねえし」
「でも、相手はピンストライプやったんや。もしものことがあったら・・・」
「ピンストライプだって生き物だ。勝てない相手なんかじゃないさ」
「そうやけど・・・」
その後、二人は沈黙し、墓に手を合わせた。
「ビロードさんと言う町のリーダー格の人物も亡くなってしまった。そしてワテと同じバンディクーのダルヴさんまで亡くなってしまったとは・・・」
クロックが再び喋り始めた。
「犠牲者が出たのは本当に辛い事だ。だが彼らの助けがあって俺様達は勝てたんだ。だろ?」
「そうやな」
「ふわぁ〜。さすがに疲れちまった。俺様はもう一寝入りしてくるぜ」
そう言うとポトリゲスはその場を立ち去った。
「・・・ワテも、クラッシュの帰りを待つとしよか・・・」
クロックも墓場を後にした。

クラッシュの家の前ではココとザジが会話をしていた。
「え!ザジさん、もう帰られるんですか!?」
「はい。短い間でしたけど、この町は本当にいい所でした。あなたみたいな素敵な方もいますし」
「フフ、やめてくださいよ・・・」
「それにクラッシュさんが一人で要塞に向かった際、あなたが皆に呼びかけてくれたから私たちがクラッシュさんを助けに行くことができたんじゃないですか」
「そうでしたっけ?あんまり覚えてないや・・・ヘヘ」
「クラッシュさん、生きておられるとは思うんですが・・・」
「お兄ちゃんなら大丈夫です!こんな時のために毎日トレーニングしてますから!」
「トレーニング・・・?まあ、馬鹿みたいな見た目ですけど力はありそうですもんね」
「そう、お兄ちゃんは馬鹿だから大丈夫なのよ!本当に馬鹿男ですから!」
ココはそう言うと大きな声で笑った。ザジもそれにつられて笑った。
「では、そろそろ帰りますね。天が私を呼んでいるし・・・」
「天?何のことですか?」
「いえ、別になんでも!とにかく皆さんにもよろしくお伝えください。では」
ザジはそう言うと肩にストラディバリウスのケースを担ぎ、ココに一礼をしてから町の門の方へと歩いていった。

町の門の前では南とリサが立っていた。
「リサさん、これからどうするんだ?」
「そうねえ、とりあえずこの町とはおさらばね。本当に此処の皆さんにはお世話になったわ。ありがとう」
「俺に礼を言われてもな・・・」
「南さんにもお世話になったわ。それに、強い男性っていいよね。タイプかも」
「何だよいきなり」
「フフ、なんでもない。それよりクラッシュさんにも帰ってきたらよろしく言っといて」
「ああ、帰ってくるか知らねえけどな」
「彼は絶対帰ってくる。私には分かるの」
「ほお。未来予知か。未来人だけに」
「え!?な、何のことかしらね・・・?」
「隠したって無駄さ。俺は最初っから知ってたぜ。あんたがこの時代の住民じゃないってことくらい」
「ど、どうして分かったの!?」
「どうしてだろうな?未来に帰ってゆっくり考えるんだな」
「教えてくれたっていいじゃないのよ!もう!」
「ははは。怒ってる姿も可愛いじゃないか」
「そんなこと言っても何も出てこないわよ!」
「おっと、そろそろ俺も戻らなくちゃならねぇ。じゃあな。また会うことがあったらいいな」
南はそう言うと自分の家へと去っていった。
「・・・また、この町に遊びに来てもいいかもね」
リサはそう呟くと町の門から外へと歩いていった。

正午のアップルタウン。太陽は高く上がり、町の住民たちも外に出て仕事をし始めた。
ポトルーズによって荒らされた場所を直したり、畑に植えられたデザートアップルの世話をしたりしていた。
そんな中、クランチは燃えてしまった酒屋の近くにテーブルと椅子を並べ、オープンカフェを開いていた。
「あーあ。せっかくの店と上質な酒が全部燃えてきてちゃった。俺、これからどうしようか・・・」
クランチは呟きながらデザートアップルを絞り、即席のりんごジュースを作っていた。
「保安官のやつ、またまぬけな顔してりんごジュースを飲みに来たりしねぇかな・・・」
クランチはそういいながらりんごジュースを飲もうとした。
「マスター。注文いい?」
何者かの声がクランチの後ろで聞こえた。
「すまない、店はこのざまでな、酒ならねーよ」
クランチは後ろを振り返らずに喋った。
「あー、お酒じゃなくてさ、りんごジュースでいいよ」
クランチはまさかと思い後ろを振り返った。
「・・・なんだただのアップルシェリフか」
「だーかーらー!そう呼ぶなよぉ!!」

《The end》

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