ワルワルスクールデイズ


伝説のスーパーロングジャンプさん作

第1章

一般人には誰にも知られていない大きな孤島。ここに一風変わった学校がある。悪の科学者を育てる悪の学校”ワルワルスクール”である。
「ねぇ知ってる?今は入室禁止になってる地下3階の奥には実はまだ地下へ続く通路があって、昔その倉庫に入った子が行方不明になったらしいよ・・・」
このワルワルスクールにはこのような噂がいくつもある。いわゆる7不思議というやつだ。もっともワルワルスクールの不思議は不思議であって不思議でない。
そのワケはこの学校の制度にあった。ワルワルスクールは小中高一貫校で1〜12年生まで通っており、その最上級生は少なくとも1つの発明品とレポートを
提出しなければ卒業することができない。いわば大学の卒業論文のようなものである。ただでさえ毎日のように悪戯事件を起こすような生徒の集まりが全員発明品を作る
となると、今や校内のどこに何が仕掛けられているか分かったものではない。そんな学校であるからどんな事件や怪奇現象も大抵は生徒の悪戯発明品で片付けられてしまう。
しかし、この噂は後に恐ろしい事態に発展をとげることになる・・・

ある日、とある少女が生物科学室に向かっていた。少女の名はニーナ・コルテックス。彼女の叔父はあの悪の科学者ネオ・コルテックスだ。彼女は今年で8年生になり、
授業も(一般人から見れば)一段と凄味を増していった。ちなみに、今日の授業は磁石ネズミを改造して発明品を作る研究である。と、そうこう言ってるうちに
ニーナは教室に着き、教室の扉を開いた。中には半分ほどの生徒が席に着いていた。そしてニーナは自分の席に着くと、左隣の席の男子生徒がニーナに話しかけてきた。
ナット「ようニーナ。俺今回の実験で名案を思いついたんだ。ちょっと協力してくれないか?」
この少年の名はナット・プランク。ニーナの1年生からの親友である。かなりのイタズラ好きで、実はニーナの性格がひねくれたのもナットが少し影響している節がある。
ニーナ「いいわよ。今度はどんなイタズラ?」
ナット「ちょっと耳貸せ」
2人がコソコソ話をしていると、女子生徒がニーナの右隣の席に着きながら話しかけてきた。
カトリーヌ「何何〜?またイタズラ作戦?」
この少女はカトリーヌ・フォー。彼女もまたニーナの親友である。彼女が入ってきてから次々と残りの生徒もやって来てほとんどの席が埋まったところでチャイムが鳴った。
チャイムが鳴り終わると同時に、割と爽やかな顔立ちの男の教師が入って来た。この男の名はクレア・チャーリー。5〜8年の生物科学担当の教師だ。
ちなみに、ワルワルスクールに担任は特にはおらず、ホームルームの代わりに生徒用の寮がある。生徒たちは各人の寮部屋から教室に向かうわけだ。とはいえ、
生物科学を選択している生徒とはほぼ毎日顔を合わせている。ニーナ達にとって、クレア先生は担任のようなものだろう。しかしこの先生、実は・・・
クレア「ハイ、じゃ授業を始めるわよ」
今の一言でだいたい理解していただけただろうか。そう、何を隠そうこの男は心は女性そのものである。生徒達はこの不自然なトーンにもうすっかり慣れている様子だった。
因みに、ワルワルスクールでは礼とかそういったことをすることはない。授業は教師のタイミングで始まる。
クレア「今日の実験は磁石ネズミの改造よ。磁石ネズミは・・・もう皆の所に配られてあるわね。それじゃ早速ネズミの腹部を切開して・・・」
と、そこへ突然教室の扉が開かれた。
シド「あ、あの・・・すいません寝坊しました!」
一瞬教室が静まり返り、すぐに教室中どっと笑いが起きた。この慌ただしく入って来た男はシド・ブランダー。彼は笑われながらツカツカと自分の席に座った。
ナット「まーた寝坊かよシド」
シド「だって・・・目覚まし時計のセットした時間が2時間ずれてて・・・」
ナット「お前はどこまでバカなんだ・・・」
ようやく本格的に実験を始める生徒達。しかし、シドがピンセットでネズミの体内に実験器具を取り付けようとしたその時、その器具を落としてしまった。
シド「あっ!」
ナット「まーたやらかしたか」
丸い器具はゆっくりとだが床を転がっていく。
ニーナ「あーあれは絶対大変な事になるパターンね」
ナット&カトリーヌ「同感ー」
シド「だったら止めてくれよもう!」
そう言ってシドは転がる器具を追いかけていく。
ニーナ「いやアンタがいったら余計に・・・」
しかしニーナの言葉も空しくシドはその器具を踏んでしまい体勢を崩して前に倒れ込む。その先には様々な実験器具が置いてある棚があり、シドは勢いよくそこにぶつかった。
ガラスの器具は爽快な音をたてて粉々に割れてしまい、不気味な虫を入れた瓶も割れてそこから大量の虫が逃げだした。
3人「やっぱりね・・・」
クレア「ちょっとそこ何やってるの!・・・またシドね」
シド「うぅ・・・すいません」
こうしてクレア先生は逃げだした虫を授業中必死で集める破目になった。
ナット「それよりニーナ、準備できたか?」
ニーナ「えぇ、じゃあ始めるわね」
そう言ってカーナビのような機械を手に取りスティックを操作した。すると、磁石ネズミがニーナの操作通りに動きだした。画面には磁石ネズミの視点が映されている。
ニーナはその画面を見ながら磁石ネズミを生物科学準備室へ行かせた。さらに奥へ進むと画面に鉄籠が映った。ニーナはそれを見て微笑を浮かべその籠を磁石ネズミに
開けさせた。すると、その中に入っていた何十匹ものレッドバット(赤コウモリ)が飛びだし、レッドバットはニーナ達の教室に入ってきた。
シド「レッドバットは決まった場所を飛び回る習性がある・・・まさか!」
ナット「その通り。さっすが、生物の知識だけはあるな。レッドバットが通る場所に発電装置を作っておいた」
そしてレッドバットは吸い込まれるように発電装置の中に入っていき、タービンを回す。これにより発電装置に半永久的に電力が溜まる。そしてナットの手元にある
コントローラーの電力ゲージが満タンになるのを見てボタンを押し、強力な電磁石を発動させた。すると、磁力を大幅に増大させた磁石ネズミと激しく反発。
磁力と磁力がぶつかり合うその中間地点には花火玉が置かれていた。強力で不安定なその力は勢いよく花火玉を持ち上げ、最も力が競り合う地点で火花が散る。
その火花が花火玉の導火線に着火し、花火玉は鼓膜が破れそうな音を出しながら巨大な花を咲かせた。
ナット「よっしゃー!大成功ー!」 ※よい子の皆は室内で花火を打ち上げるのはやめましょう&この理論は全くのデタラメです;
他の生徒も始めは驚いたが、その後笑ってナットに拍手を送った。
クレア「まったく・・・今日も手の込んだイタズラね」
先生も微笑みながらナットを見て言った。こうしてハチャメチャな授業はようやく幕を閉じ、ニーナ達は次の授業の準備をしようとした。が、
クレア「あーちょっと、ナット君にシド君。あなたたちは今日の授業が終わったら校長室に行ってらっしゃい」
ナット&シド「え〜〜〜〜〜!?」
2人がそんな反応をするのも無理はない。授業終わりの校長室、そこは地獄になる。大きな問題を起こした生徒はアンバリー校長直々にキツ〜イお仕置きを受けるのだ。
ナット「いいじゃんかあのくらい」
クレア「いやあのイタズラは危険すぎるでしょ。それにさっきの爆音は校長先生の耳にも入ってると思うわよ?」
ナット「ちぇっ」
ニーナ「フフフ、気をつけて行って来てね」
ナット「うるせぇなぁ、だいたいお前も協力してたろが」
そんな会話をしながら廊下を歩いていると、何やら向こうで一悶着あったようで、騒がしい音が聞こえてきた。すると曲がり角から誰かが走って来た。見るとかなりの老人だ。
ナット「ダークか・・・」
ニーナ達が見たのはダーク・サファイアだ。ああ見えてもワルワルスクールの生徒である。彼は1000歳(推定)にもかかわらず2学年。寿命はある薬を発明してそれを服用
し続けて伸ばしているんだとか。そんな大発明をしているのに何故2学年のままなのか?と疑問に思う者も多くいるが、それは彼に関わってみれば簡単に分かることである。
ダーク「ええい邪魔だ!!」
ダークはニーナとナットに思い切りぶつかって突き飛ばそうとした。それを2人はいとも簡単に避けたが、その後も彼はまるで廊下に誰もいないかのように全力疾走だ。
ニーナ「今回は何盗んでた?」
ナット「リコーダーだな。音楽室に向かってた奴のだろうなありゃ」
ダークは何故か楽器に異常な執着があるようで、楽器を持っている人を見ると咄嗟にそれを盗んでしまう。昔は音楽室の巨大なパイプオルガンをも盗もうとしたことが
あったんだとか。因みに一度たりとも逃げ切れたことはないらしい。そして今回の件もすぐに捕まった。そのクラスの生徒全員分のリコーダーを盗もうとしたために、
クラス全員を敵に回してしまい挟み打ちで取り囲まれ身柄を確保された。こんな無計画且つ無謀な事件を頻繁に起こすために、寿命を延ばす薬を発明した年に1度進級した
ままに留まっているのである。
ニーナ「なーんだ。結構早く捕まったわね。つまんないの」
そう言ってニーナ達はその場を後にした。

そして、なんだかんだで午後の授業が終わり昼休み。(飛びすぎだけど気にしない)ワルワルスクールの昼休み時間は1時間とかなり長い。各教室の移動時間も考えての
設定だが、余裕があるだけにこの時間に騒動が起きることも多い。そんな中ニーナは携帯電話を取り出し、誰かに電話をかけた。電話がかかってきて、着信相手を見ると
急に冷や汗をかき、手も震えだす男。男は1回深呼吸して電話に出た。
ニーナ「あ、パーシー、あたいの弁当買ってきてくれるー?今日はサンドウィッチセットね」
パーシー「あの〜でも今・・・」
ニーナ「あ〜あとカトリーヌの分もね」
ナット「何だ?おつかい?じゃ俺照り焼きバーガーMセットで」
シド「あ、僕のは適当でいいよ〜」
僕はドライブスルーの店員か!!と言いたくなったが、怖くて言えなかった。
ニーナ「じゃ、そういう事でヨロシク」
電話は切れてしまった。5年生のパーシー・リグレットは気弱な性格もあってか度々ニーナからこのような扱いを受けている。仕方なく食堂に向かうパーシー。
しかし食堂ではそれ以上に厄介な問題が発生していた。カウンターの目の前で2人の生徒がにらみ合っている。パーシーはこのままいったら確実に巻き込まれると確信した。
しかし早くニーナ達に弁当を届けないとどやされる。パーシーはここで究極の選択を迫られた。
デス「あぁ?お前なめてるのか」
ダークネス「なめているのはお前の方だろう。俺の力を見誤るなよ?前は手加減してやっていたのに気付いていないのか?」
あれはダークネス・ダークとデス・クラッシュ。誰かと思ったらまたあの2人か!2人とも機械科学を選択しているがかなり相性が悪く頻繁に衝突する。しかも
デス・クラッシュの方が1つ学年が下なのだが、いつも決まってダークネスの方がボッコボコにされて保健室行きで終わる。で、パーシーとダークネスは同学年同クラスだ。
パーシーにとってはますます彼らに絡まれるわけにはいかなかった。
デス「だったら本気を出してみろ!」
そう言ってついにダークネスに殴りかかったデス・クラッシュ。ダークネスは勢いよく吹っ飛んだ。
ダークネス「フン・・・お前、俺を殴ったな・・・今俺の中に眠っていた潜在能力が目覚めたぞ!」
何を言っているんだか。これ以上ためらっていては間に合いそうにない・・・パーシーはついに覚悟を決めて2人の間を通った。
パーシー「ちょ、ちょっとすいません」
デス「あぁ?今取り込み中なんだよ!」
デスの方から鋭いパンチと、ダークネスの緩いパンチが間に立ったパーシーの顔に同時に打ち込まれた。
パーシー「あの・・・サンドウィッチセット2つと照り焼きバーガーMセット2つ・・・」
こうして顔面ダブルパンチを喰らいながらも何とか弁当を買いニーナ達のいる談話室へ急いで向かったのだが・・・
パーシー「ニーナさん弁当持ってきましたー!」
ニーナ&カトリーヌ「遅い!」
ナット「12分35秒・・・これは確かに遅いな」
パーシー(え〜〜〜!?めちゃくちゃ頑張ったのに・・・)
こうして結局2人の喧嘩に巻き込まれた上にニーナ達にもどやされたパーシーであった。

午後の授業が始まるころ、遠くの崖からワルワルスクールを眺める1人のバンダナを巻いた男がいた。
???「ここがワルワルスクールか・・・」
男はバンダナで隠れている右目をおさえながらそう言って、ワルワルスクールに向かって歩き出した。空には徐々に禍々しい雲がかかってきた。

そして、午後の授業も終わり大概の生徒は寮に戻っていく。しかしナットとシドは寮とは別の方向に向かっていた。そう、午前の生物の授業での件だ。
2人はクレア先生に校長からの居残り授業を宣告されていたのである。そしてついに校長室の扉の前に着く。2人は一度呼吸を整えてから扉をノックした。
次章、恐怖の居残り授業の幕が開く・・・

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