ワルワルスクールデイズ


伝説のスーパーロングジャンプさん作

第2章

ナットとシドは大きめな校長室の扉を少し開き、そこから顔を少しだけ出して室内の様子を窺った。中は薄暗く、辺りには不気味なオブジェや絵画などが飾られている。
アンバリー「あ〜らナットちゃんにシドちゃん、また来たのね〜」
突然奥から甲高い声が聞こえてきたので2人は驚き、思わずコケてしまった。顔を見上げると、どこから出てきたのかアンバリー校長が2人を見ている。
アンバリー「アタシの聞いている限りではあと2人来るはずねぇ」
噂をすればその2人が既に開いている扉の前にやって来た。ナット達が振り返ると、そこに立っていたのはダーク・サファイアとデス・クラッシュだった。成程、
ダークの件は休み時間の時に見た。デスの方は・・・見てはいないがまぁ大方予想はつく。(因みにこれは後で分かった事だが、ダークネス・ダークが保健室に運ばれる
騒動があったらしい)互いが頻繁に顔を合わせるいつもの居残り常連組だ。
アンバリー「さぁ〜それじゃ始めるわよ」
微笑を浮かべながら右手からバチバチとスパークを発生させた。いよいよ恐怖のお仕置き授業が始まる・・・
デス「ふざけるな、こんなもんやってられるか!」
ダーク「アンバリー!もうお前の下らんお遊びには付き合ってられん!」
2人はそう叫んでアンバリーの方に大股で向かっていく。
ナット(バカかあいつら!校長に喧嘩売ろうってのか!?校長にはむかって勝てるわけねぇだろ)
そしてデスとダークがアンバリー校長に殴りかかろうとした時、アンバリー校長は急にグンと空中に浮き上がり、高い天井近くまで上がった。
デス「何だ!?」
シド「飛んだー!?」
ナット「ロープだ・・・校長は天井からのロープで宙吊りの状態になってたんだ」
この薄暗い大部屋では、デス達の視点からはロープは見えづらかったという訳だ。アンバリー校長はナットのつぶやきに感心した様子でほくそ笑んだ。
アンバリー「あら、よく分かったわね〜ご褒美をあげるわよ〜」
そう言って校長は手から発した電気で大量の巨大タライを引きよせた。そして校長が電気を止めた瞬間、一気にタライが落ちてきた。
ナット「つーか校長室のどこにそんなもんが!?」
そう突っ込んだ直後、タライの雨がナット達を襲う。あの高さから金属製のタライが落ちてきたら・・・相当痛い。早くも全員にたんこぶが出来てしまった。
デス「くそ!ふざけた真似を・・・」
そう言ってデスはポケットから大きめの銃を取り出した。見た目があからさまに金属製で、何かゴツイ。どうやら普通の銃ではないようだ。
デスがその銃のトリガーを引くと、銃口からはレーザーが出てきた。レーザーは壁という壁に反射し、目にもとまらぬ速さで校長室中を駆け回った。
デスはそれを連射し、誰かれ構わぬ無差別攻撃を繰り出した。
ダーク「なっ!お前ワシにも当たりそうになってるだろうが!」
デス「知るか!お前はすっ込んでろ!」
ダーク「何だと!?貴様・・・」
こうしてダークの標的はデスにすり替わってしまった。ダークがデスに向かいながら懐から何かを取り出そうとしたその時・・・
アンバリー「仲良くしなきゃだめよ?」
ダークの後ろにはアンバリー校長が微笑みながら右手をスパークさせていた。そして前にいたデスごと電撃攻撃をお見舞いした。2人は身体が麻痺してしまった。
シド「アンバリー校長!レーザーが効いてなかったの!?」
ナット「マジかよ!?」
実は、アンバリー校長の周囲に電磁波のバリアを作りだしガードしていたのだ。アンバリー校長は2人を見た後、今度はナットとシドの方を見てこう言った。
アンバリー「さぁ、次はあなた達の番ね」
・・・・・・;
ナット&シド「ぎゃあああああああああああ!!」
その後も4人の叫び声は校長室の扉から漏れ出していたという。

一方、ニーナの寮部屋にてニーナとカトリーヌは午前の授業で改造した磁石ネズミのモニターでその様子を見ていた。
ニーナ「ハハハハ今回も派手にやられてるわねー」
と、恐怖の居残り授業も終わったようである。
カトリーヌ「あーあ終わっちゃったかー」
ニーナ「ねぇ何か面白い話ある?」
カトリーヌ「ん〜・・・そういえば何か近々ミス・ワルワルスクール開催するらしいよ」
ニーナ「あーあの4年に1度やるっていう?」
カトリーヌ「そーそー」
彼女らの言うミス・ワルワルスクールというのは、4年に1度行われる学校一の美女を決めるというワルワルスクールの数少ない行事の1つである。
これが意外と盛大な盛り上がりを見せるのである。女生徒の参加は基本的に自由であり、紙に名前を書いて投票箱に投書することで参加できる。
(そのため友人に勝手に投書されるという事も多々ある)
カトリーヌ「参加してみたら〜?」
ニーナ「え・・・」
どうやらニーナも成り行きで参加することになりそうだ。

その夜、会議室では教師や事務員などが一堂に会し予定会議が開かれようとしていた。アンバリー校長は居残り授業をしていたため少し遅れて会議室に入って来た。
アンバリー「皆さんごきげんよう」
職員達「あ、お疲れ様です」
アンバリー「それでは始めましょうか。まず前期の経費を報告してちょーだい」
事務員「はい。まず授業や自由活動における経費や収入については手元の資料をご覧ください」
皆一斉に資料を見た。そこに書かれている額は物凄いものだった。この学校では毎年複雑な研究資材を大量に必要とすることを考えると何ら不思議な数字ではないが
一般人がこれを見たら間違いなく目玉が飛び出ることだろう。ここでは誰からも質問はなく、次に今後の予定が議題に上った。
クレア「そういえば最近熱帯鮫の水槽の水温が調子悪いわね」
アンバリー「あそこはボイラーで水温調節してたわね。ボイラー管理人は・・・」
事務員「・・・いませんね」「まったくあいつは・・・」
ワット「うぃーっす。遅れましたー」
ぼさぼさな白髪頭をかきながら遅れて入って来たこの男こそがボイラー室の管理人ワット・サぺルだ。ワットは周りの軽蔑の眼差しをものともせず自分の席に座った。
アンバリー「熱帯鮫の水槽の調子がおかしいそうよ」
ワット「はい〜適当に修理しておきま〜す」
全員「・・・・・・」
アンバリー「じゃ次、今年はミス・ワルワルスクールを開催する年です。そろそろ準備の方を始めていきましょうか」
校長のこの一言でミス・ワルワルスクールについての話し合いが始まった。教師の間でもこの話し合いは結構テンションが上がるそうだ。話し合いは順調に進んでいた。
???「お仕事ご苦労様です」
突然後ろの方から聞き覚えのない男の声がした。昼過ぎにワルワルスクールを眺めていたバンダナを巻いた男だ。
アンバリー「誰!?」
クロック「僕はクロック・バンディクーと言います。宜しく」
教師「どこから入って来た!?不審者だぞ!」
クロック「ちゃんとノックして入ってきましたよ。それより僕はあなた達にお願いしたいことがある」
ムート「あ!お前・・・何でこんな所に!?」
奥にいた1人の新任教師がようやく騒ぎを理解したようで、クロックの前に出てきた。
クロック「やぁムートじゃないか。こんなとこにいたのか」
クレア「ムート君あの人の知り合い?」
ムート「え、まぁ・・・こいつは私の幼馴染です。トレジャーハンターをやってると聞いていたんですが・・・」
クロック「そのトレジャーハンターとしてここに用があって来たんです。実は僕は今、ある宝石を探していまして・・・情報によるとここにその宝石がある可能性が
高いんです」
ムート「おいそれ本当かよ?」
ムートは小声でクロックに質問した。それをクロックも小声で返す。
クロック「ああ、本当だよ」
クロック「それで、しばらくこの学校の敷地を捜索させてほしいんです」
アンバリー「まぁ〜トレジャーハンター?素敵じゃない」
クロック(よし、いい流れだ・・・)
アンバリー「分かったわ。あなたを我がワルワルスクールの生徒にするわ!」
アンバリー以外「・・・はい?」
ムート「え・・・それってどういう意味ですか?」
アンバリー「そのままの意味よ。クロックちゃんはワルワルスクール生徒の一員としてこの学校のお宝捜索を許可するわ」
ムート「し、しかし・・・」
アンバリー「いいじゃないの、あなたの幼馴染なんでしょ?それにどうせなら皆で探したほうが楽しいじゃない。ねぇ?」
クロック「はぁ・・・(まぁいいか。とりあえず潜入は成功だ・・・)」
それにしてもこの校長は強引な人だ。皆が疑いの目で見ている中、部外者を生徒として受け入れるとは・・・

こうして、何故かワルワルスクールの生徒になってしまったクロック。数分後、彼はワルワルスクールの制服に着替えていた。
アンバリー「あ〜らまぁ似合う似合う!それで選択科目はどうする?」
クロック「(妙に話が早いなこの人は・・・)選択科目って何ですか?」
アンバリー「ここは悪の科学者を育てる悪の学校なのよ。当然科学の授業には力を入れているわ」
そう、この学校のカリキュラムはほとんどが科学関連。それほど高度な科学技術を学ぶということだ。そして科学においてそれぞれの得意分野を活かすために、1年生でも
主に学ぶ科学の分野を選択しているのだ。選択科目は機械科学、生物科学、薬剤科学、自然科学の4つで、これによりクラスや寮が分けられている。選択した科目は毎日
2時間以上は授業を受けることになる。つまり、科学科目の選択は今後の学校生活においてもかなり重要になってくる。クロックはそんな説明を受けた。
クロック「(そうだな・・・機械なら多少はいじったことあるし)じゃあ機械科学でお願いします」
アンバリー「決まりね!そういえばちょうど今6年生が探索機械技術を学んでいるところだから、そこのクラスに入れたらどうかしら?」
クロック「それはいいですね」
アンバリー「えぇ、それじゃ卓士ちゃん、明日そのクラスの子にクロックちゃんを紹介しといてちょうだい」
見山 卓士「はい、私が責任を持って紹介します!」
威勢よく返事をしたのは4〜8年の機械科学を担当する見山卓士(みやま たけし)だ。見た感じは体育教師にありがちな熱血先生と言ったところか。
見山「クロック君!明日から君の面倒を見る見山卓士だ。宜しくな!」
クロック「宜しく(へぇ・・・ワルワルスクールにもこんな感じの教師はいるのか)」
見山「とりあえず今日は色々と学校の説明をしておこうか。こっちに来るんだ」
クロックは見山に連れられ、校内を歩き回りながら説明を受けた。

見山「この学校には大きく分けて校舎と寮がある。生徒は授業の時以外では寮で生活している。夜6時以降は校舎に入ってはいけないからな。気をつけろよ」
クロック「分かりました」
見山「ちなみに夜は見回り先生が校舎を見回っているからな」
クロック「見回り先生?」
すると、廊下の向こうから懐中電灯の光が差してきた。
見山「ほら、噂をすれば・・・」
マルク「んん?君はさっきの・・・」
見山「マルク先生、お疲れ様です。クロック君、この人が夜の校舎を見回っているマルク先生だ」
正確に言うと、彼は生徒指導部の教師である。本名はマルク・ミノワール。それにしては穏やかな雰囲気の教師だが、怒るとそれなりに怖いらしい。
クロック「初めまして」
マルク「あぁ、宜しく・・・それじゃ、そろそろ他の場所を回るから」
挨拶をすませると見回り先生はまた夜の校舎を見回っていった。それからしばらく廊下を歩いていると、ある場所に出た。中心は吹き抜けになっており、足場が壁に沿って
螺旋状に上の階まで続いている。壁にはたくさんの本棚があり、分厚い本が所狭しと詰め込まれている。
見山「ここは図書室だ。休みの日や昼休みの時なんかに来るといい」
クロックは吹き抜けの下の方を覗いてみた。見ると、足場は下にも続いている。
見山「ああ、その下は生徒の立ち入りは禁止だ」
クロック「・・・何があるんです?」
見山「研究資材を置いている倉庫だそうだ。閲覧用の資料室は別にあるが・・・おっと、もうこんな時間か。そろそろ寮に案内しよう」
そう言って2人は図書室の階段を上り、寮へ向かった。
クロック(それにしてもこの高さから落ちたら相当危険だな・・・何でこんな作りになってるんだ?)
そんな疑問を残しつつ、クロックは寮の入り口に着いた。道はまず前、右、左に分かれている。
見山「ここが生徒達の寮だ。さっきも説明したように寮部屋は選択科目クラスによって4つに分かれている。君の寮は機械科学クラスだからここから見てすぐ右に進んだ
所だ。前に進めば中央の食堂に突き当たる」
因みに奥右(南寮)は生物科学、奥左(東寮)は自然科学、手前左(北寮)は薬剤科学クラスの寮である。そして2人は機械科学クラスの入り口の扉を開けた。
ここは誰かの寮部屋・・・というわけではないようだ。奥には暖炉があり、その火は消えかかっていて、電気も消えている。どうやらもう消灯の時間のようだ。
見山「皆はもう寝ているな・・・ここは談話室、生徒との交流の場だ。ここから皆の寮部屋に繋がっている」
そう言いながら暖炉のわずかな灯の明かりを頼りに電気をつけた。部屋の中央にはテーブルがあり、その上にはお菓子などが置いてあった。ふかふかそうなソファもいくつか
置いてある。
見山「君は6年生に入るから3階だな・・・こっちだ」
そう言って談話室の電気を消し、奥の上へ続く階段へと上っていった。少し上っていくと、脇に道があり、その先の扉の上には6年生と書かれた札が掛けられていた。
因みに、これは学年ごとに階が決まっているわけではなく、一度入学した生徒はその場所で固定され、卒業した生徒が抜けた場所に来年度の入学生が入ることになる。
(例外として留年やとび級になった生徒は学年に合わせて場所を移動することになる)それで今年度の6年生の場所は3階にあったのである。中に入るとアパートのような設計で
左右にそれぞれの寮部屋の扉が続いている。2人はその廊下をさらに奥に進み、ある部屋の扉の前に立った。
見山「さぁ、ここが君の寮部屋だ。ここは自分の好きなように使ってくれていい」
クロック「分かりました」
見山「じゃ、後は明日だな。授業は8時半から始まるから、それまでに機械科学準備室に来てくれ。それじゃ」
クロック「はい」
クロックはとりあえずそこにあったデスクの椅子にゆっくりと腰かけた。
クロック「ふぅ〜・・・(さて、と・・・ここからが本番だな)」
次章、いよいよクロックの初授業!一体どうなることやら・・・

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