fight&fly


フレインさん作

第6話 〜水〜

「あああああああああ!!!」
身の毛もよだつ悲鳴が頭上から聞こえた。
この声が誰のものであるかわかるまで0.002秒かかった。
上の光の点をココは不安げに見つめた。
穴の底はかなり広かった。
どうしようもなく寒い。
自分達が凍え死ぬまで30分とかからない、と冷静に考えた。
そして考えたことを後悔した。
隣のクラッシュはいまにも沈みそうだ。
穴の底は、どういうわけか水…それもかなり冷たい水…が居座っていた。

コルテックスは目の前に横たわる筋肉の塊をみつめた。
口元に満面の笑みを湛えて。
計画通りだ。
クランチを穴のふちまでひきずる。
クランチの脇腹を撃ち、穴に落とす。
それはすぐに闇と同化した。
無線機を取り出す。
すぐにエドウィンの持つ無線機とつながった。
「こちらネオ・コルテックス。準備を完了致しました」

何かが落ちてきたのを、ココは音で察した。
クラッシュ「ク、クランチ!!」
クラッシュは必死にクランチを抱きとめた。
アーネストを足蹴にしたことまで気が回らなかった。
心臓の音を確かめようとした。
クラッシュ「う、動いてないっ…!!」
ココにはそれを突っ込む元気がなかった。
クラッシュはクランチの腹に耳を当てていたのだから。
ココはすでに感覚が麻痺し始めた体を引きずり、左胸に耳を当てた。
ココ「生きてるわよ……」
とりあえず安心する。
が、ここにずっといては自分達もクランチも死ぬだろう。
ココは考えた。
考えた。考えた。考えた。考えた。考えた。
考えて考えて考えて考えて考えまくった。
ふと、あることを思いつき、ポケットに手を入れた。
クラッシュ「なんだ、それ?」
クラッシュはココの手に握られたスーパーボールほどの大きさのものを見つめた。
ココ「これはココどこワープマシンの次世代型よ。持ち運びができるように拡大、縮小ができるようになったの。こんな風に…」
ココがあるボタンを押すと、一気に人が一人入れるほどの大きさになった。
クラッシュ「すごいじゃん!じゃあ早く使おうよ!!!」
ココ「だけどこのマシーンにも問題点があるの…」
ココは低い声で続けた。
ココ「このマシンはまだ途中だからワープできるまで10分はかかるわ。それにワープ先を特定していないからどこに出るかわからないの…」
クラッシュ「………………?」
クラッシュはまるでわかっていない。
アーネスト「つまり、ワープしている間にハゲが何かを仕掛けてくるかもしれないし、間に合ってもその先は北極かもしれないし、タスマニアかもしれないし、海の中かもしれないって事だね…」
ココは重々しくうなずいた。
クラッシュ「やってみようよ!!!」
クラッシュは事の重さをわかっていないKYだ。
ココ「お兄ちゃん…今の話聞いてた?」
クラッシュ「もちろん聞いてたよ!でもここにいるよりはましだよ!ねっアーネスト!」
アーネスト「そんなこと僕に振られても…。でも、そうだね。やってみよう、ココ!」
ココ「そ、そう…。わかったわ。準備するからまってて」
気の乗らない様子でココは準備に取り掛かった。

その数百メートル上にはコルテックスの飛行船が浮いていた。
コルテックスの無線を受け、エヌ・ジンは新開発スーパー双眼鏡をのぞいた。
ジン「目標確認……目標の真上に到達しました」
エドウィン「よし、タイニー、準備しろ」
冷酷な目で黒い岩を一瞥した。
エドウィン「いまだ、落とせ」
タイニーは開け放たれた出入り口に向かって岩を投げた。
それは音もなく滑り落ちた。

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