狼の死後「big chance!」


フレインさん作

第2話 〜邪魔〜

エドウィン・ブレイズの今までの作戦は、どちらも大胆かつ興味のひかれるものだった。
成功していないのは同じだが、コルテックス達の作戦よりも惜しいところまでいったのだ。
ニーナ「何の用?」
開口一番にニーナがそういう。
声は怒りで固くなっている。
ニーナは何に対して怒っているのだろう。
コルテックスを殺したのはエドウィンではないのに。
エドウィン「新たな作戦をか…」
話し始めたエドウィンの声をさえぎったのはやはりその女。
ニーナ「黙って」
エドウィン「これ…」
ニーナ「黙りなさい」
エドウィン「人のは…」
ニーナ「黙れ!!」
ニーナはいきなり涙を流し始めた。
ニーナはやはり愚かだ。
怒りのぶつけどころが間違っている。
はやく続きが聞きたくなり、先を促そうと口を開きかけた。
しかしニーナがまた邪魔をする。
ニーナ「あんたは何なの!?あんたのせいで叔父さんは…っ…死んだのよ!!それがわかってるの!?」
コルテックス家は邪魔するのが得意なのだろうか。
エドウィン「私が殺したわけではないし、死に貶めたわけではない。それはおまえにもわかっているはずだ」
エドウィンの言うとおりだ。
ニーナもそれがわかっている。いや、今わかったのかもしれない。
しかし、ニーナの目の奥に宿った炎は勢いを緩めなかった。
むしろ今の言葉で油が注がれたようだ。
ニーナ「そもそもなんであんた達はあたい達を頼ってきたの?あたい達はほとんど何もやっていないじゃない!」
エドウィン「そうだな。おまえたちはいてもいなくてもよかった。我々が協力を求めたのはそこの宇宙機械技師だ」
取り乱したニーナの声と、冷静なエドウィンの声。
当のエヌ・ジンは、自分が二人の会話の話題にのぼったことすら気づいていないようだ。
虚ろな目で虚空を見つめている。
哀れでとも思えない。
自分達がたとえ脇役扱いだったとしても、さほど気にならなかった。
それは能力による問題で、相手が機械の知識を求めているとき、違う能力を持つ自分達がいても仕方ない。
そういうことだ。
しかし、そう思わない奴がいた。
ニーナ「出てって」
さながら細針のような声。
冷静になったと思ったら、大間違いだった。
エドウィン「お…」
ニーナ「出てけ!」
いきなりニーナの鋼鉄の腕が伸びる。
耳を覆いたくなるような大きな音。
水を強く打つ音。
静寂。
エドウィンはいなくなっていた。
結局続きを聞けなかった。
きっと自分は、コルテックス家に永遠に邪魔され続けるのだろう。
孫、ひ孫の代まで。
そう思った。

戻る