狼の死後「全力前進」


フレインさん作

第1話 〜会議〜

今日は会議がある。
いつもの会議だったらなんでもなかっただろう。
しかし、今日は特別だった。
そう、叔父さんが死んでから初めての会議。
気が進まない理由はそれだけでは無い。
叔父さんの手下や、参謀、なによりウカウカの反応が怖かった。
ちっとも悲しんでいないかもしれない。
いつもどおりに事が進むかもしれない。
そう思うと、腰が引けた。
自分がさらに惨めになるかもしれない。
そんな思いは、次第に膨れ上がっていった。
心臓の鼓動が、どんどん跳ね上がっていくのがわかった。


心臓が喉にせり上がる思いがしながら、会議室の席に着く。
見知った顔ぶれがこちらを見返した。
ディンゴ、タイニー、エヌ・トロピー――――そして、ウカウカ。
吐きそうになった。
思ったとおりだ。
誰も落ち込んでいる様子が無い。
普段通りだ。
極め付けには、エヌ・トロピーは嬉しそうにさえ見えた。
幻滅の思いが募る。

エヌ・ジンが入ってきた。
その表情、仕草に救われた気がした。
陰鬱な表情。
真っ赤な目。
気だるげな動作。
誰が見ても、泣いていたのは明らかだ。

エヌ・ジンがやっとのことで席に着くと、会議が始まった。
ウカウカ「それでは、今日の会議を始める」
いつもと変わらない声に憎しみさえわいた。
ウカウカ「コルテックスが死んだことは承知だと思うが…」
やはり。
ウカウカは、部下の一人が死のうと何だろうとどうでもいい。
絶望が、頭を支配し始めた。
ウカウカ「よって、ワシの次のボスがいなくなったわけだ。そこで…」
ノックが聞こえた。
嫌な予感がする。
誰もあけようとしなかった。
仕方なく扉を開けた。
そこにいたものをひとめ見た瞬間、脳天から足のつま先の先の先の先の先まで不快が貫いた。
叔父さんの死の根本的なきっかけを作ったデンジャラス人間。
エドウィン・ブレイズ。

戻る