狼の死後「全力前進」


フレインさん作

第2話 〜決意〜

ニーナ「何の用?」
この男にはうんざりだ。
顔どころか、こいつの爪垢さえ見たくない。
エドウィン「新たな作戦をか…」
ニーナ「黙って」
エドウィン「これ…」
ニーナ「黙りなさい」
エドウィン「人のは…」
ニーナ「黙れ!!」
低温やけどしそうな程熱い水滴が流れる。
こいつが妙な話を叔父さんに売りつけたせいで…。
叔父さんは…。
叔父さんは……!
ニーナ「あんたは何なの!?あんたのせいで叔父さんは…っ…死んだのよ!!それがわかってるの!?」
エドウィン「私が殺したわけではないし、死に貶めたわけではない。それはおまえにもわかっているはずだ」
ニーナ「…………!」
そんなことはわかっていた。
自分だってそんなことはわかっている。
だが、この男には、憐薇の情、というものがまったくないのだろうか。
確かに自分の仲間たちにはないのかもしれない。
世界の崩壊につながることをしているのだから。
しかし、この男は、いくら軍隊とはいえ世界を守ることを主としている人だ。
そんな男は、この訴えに同情することができないのか。
この涙が見えないのだろうか。
そして何より、この苦しみがわからないのか―――――。
ニーナ「そもそもなんであんた達はあたい達を頼ってきたの?あたい達はほとんど何もやっていないじゃない!」
エドウィン「そうだな。おまえたちはいてもいなくてもよかった。我々が協力を求めたのはそこの宇宙機械技師だ」
エヌ・ジンは聞こえなかったようだ。放心状態になっている。
もうそんなことはどうでもよかった。
この男は、エヌ・ジンの誰も持っていない技術だけを必要としていた。
自分たちは蚊帳の外だったはず。
なのに、無関係の叔父さんだけが殺された。
もう我慢の限界だ。
堪忍袋というものがあるのなら、とっくのとうにぶち切れて、今頃北極海あたりを漂っているだろう。
ニーナ「出てって」
気づくとそう口走っていた。
エドウィン「お…」
ニーナ「出てけ!」
思わず手が――というより腕が出ていた。
強烈なパンチはそいつにクリーンヒットし、男は扉を突き破って外に放り出された。
やがて盛大な水しぶきがあがった。
ナイスショット、なんていってる場合ではない。
たった今落下した男の言葉が耳によみがえる――――私が殺したわけではないし、死に貶めたわけではない。それはおまえにもわかっているはずだ――――。
そうだ。
叔父さんを本当に殺したのは…………。
何年かけてでも、それこそ地の果て、宇宙の果てまででも行って、奴らを倒す。
そう誓った瞬間だった。

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