クラッシュ・ウェスタン2 〜Leute beim Edelstein〜


リボルバーさん作

第四章

北門前では生き残ることが出来た住民と、クロックとココがいた。
クロックとココは外から来る無数の敵の相手をしていた。
クロックはジェリコで敵の頭を的確に撃ち抜いていった。ココは得意の格闘術で接近戦を挑んでいた。
「ココ!大丈夫か!?」
「あたしは大丈夫!でも、数が多すぎるわ・・・」
「だな・・・」
クロックはジェリコのリロードを行おうとしたが既に手持ちの弾は尽きていた。
「まずいな・・・ボクも接近戦に移行するか・・・」
クロックはジェリコを腰のホルスターにしまい、敵の群れに突っ込んだ。
「おりゃ!」
クロックは敵の一人にローキックを入れた。敵は地面に跪いた。
「そこだ!」
クロックは敵の頭を思いっきり蹴飛ばした。敵は吹き飛び、倒れた。
「そい!」
ココはハイキックを敵にかましていく。右足は見事に敵のこめかみに当たり、鈍い音を立てながら敵はどんどん倒れていった。
クロックは今度は敵にアッパーを繰り出した。見事に敵の顎に当たり、敵は宙に舞った。
そこにココが跳び蹴りを繰り出し、敵は遠くまで吹き飛んでいった。
「ナイスサポート!ココ」
「お兄ちゃん、ちょっと見て・・・」
ココは敵の群れを指差した。クロックもその方向を見た。
「何だ?あいつら撤退していくぞ?」
敵はどんどん北門から出て行った。そして、北門にどんどんと巨大な何かが集まってきた。敵はそれにどんどんと乗り込んでいった。
「ココさん、クロックさん!無事でしたか!」
「俺様が来るまでに片付けるとはさすがだな」
住宅街の方からシクラメンとポトリゲスが走ってきた。そして、その後ろからクラッシュと南もやってきた。
「みんな!怪我はない!?」
「どうやら撤退命令が出たらしいな」
今度は一番東の通りからウォーラスと宿泊客、そしてロック、ヘルゼル、リタイラルがやってきた。
「ふぅ、何とか一息ついたみたいだな、フェアー」
「まだ安心はできないな・・・」
「と、とりあえず一杯飲みたいところだ・・・」
皆は一箇所に集まった。
「とりあえず生存者はこれだけか・・・ん?みんな、道を開けて!」
クラッシュが叫んだ。全員がとっさに北門から離れた。
その瞬間、中央通りから物凄い速さで何かが横切り、北門を出た所で止まった。
「ニーナ、こんなもん用意してたなんて聞いてないぜ」
「部下の一人が南側から車で強行突破してきたんだよ。こういうときは使えるんだよね〜」
車からフレイとニーナが降りてきた。
「な、何者なんだよ!?」
クラッシュがニーナたちに向って叫んだ。
「あら、この街のヘタレ保安官、クラッシュバンディクーじゃないの」
「あれが保安官?笑わせやがってよ。ハハハハハ!」
二人はクラッシュを指差すと笑い出した。
「質問に答えろ!」
クラッシュは怒鳴った。
「そんなに怒らなくていいじゃないのよ。あたいらはVater。で、あたいの名前はニーナ」
「そそ、それで俺の名前はフレイってとこだ」
ココはVaterと聞いた瞬間驚いた。
「Vater!?まさか、あの・・・?」
「そうよ。さすがに名前くらいは聞いたことあるみたいね」
ニーナはそう言うと車のトランクを開けた。そこにはクランチが縄に縛られた状態で入っていた。
「ク、クランチさん!」
シクラメンが叫んだ。
「あんたの店のマスターでしょ?口の割りに雑魚だったわ!アハハハ!」
ニーナは高笑いをした。
その時、どこかから何者かがやってきた。
「任務完了だ」
その何者かはそう言うと右手に持っている何かをニーナに見せた。
「そうよ!それが欲しかったのよ!もうこんなところには用はないわ!フレイ、車を出して!」
南はそれを見てびっくりした。
「クソ、向こうの手に渡ってしまったか・・・保安官、あれお前のオパールだぞ」
クラッシュはそれを聞いた瞬間飛び上がった。
「えー!?おいらの宝石が・・・」
「まずいぞ・・・やはりあれが目的だったか・・・」
南が呟いた。
「・・・あの後姿、どこかで見た覚えが・・・」
リタイラルが何者かの後姿を見て呟いた。
「フレイ!適当に置き土産置いていったあげたら?いくらなんでもかわいそうじゃない?」
「ニーナの口からそんな言葉が出るとは思わなかったぜ。そうだな・・・タイニー!あとは任せた」
フレイの言葉と共に、タイニーが車から降りてきた。
「タ、タイニー!?」
クラッシュが叫んだ。
「残念、この馬鹿はあんたのことなんか覚えてないわ。この馬鹿、力だけは凄いからせいぜい死なないようにね。でも、あんたたちに今まで一緒に生きてた仲間を殺せるかしら?できればその様子を見ておきたかったけど、仕方ないわね。あ、そうそう。ディンゴとリラ・ルーもあたいらの仲間になってもらったから!じゃ、ば〜いば〜い!」
ニーナはそう言うと車に乗り込んだ。それと同時にフレイと何者かも車に乗り込んだ。
そして、車は発進し、闇に消えていった。それに続くように部下の乗ったトラックも走っていった。
「グォー!タイニー!こんなやつ等すぐやっつける!」
タイニーはいつでも暴れる準備は出来ていた。
「みんな!タイニーはおいらたちの仲間だ!できれば傷つけずに助けたい!協力して!」
クラッシュはそう言うとSAAを腰にしまった。
「うん、ボクもタイニーを殺すことは出来ない」
クロックは指を鳴らしながら言った。
「あたしも何とかしてタイニーを止めてみせる!」
ココはそう言うと準備体操を始めた。
「どうやら事情があるみたいだしな。俺様も助かる見込みのある奴を殺すことはできねぇ」
ポトリゲスはシカゴタイプライターを背中に背負い、葉巻を口にくわえ、火をつけた。
「私もできる限りのことをします!」
シクラメンもフラワー・スピアを取り出した。
「非殺傷は嫌いだが、仕方ない」
南は峰の部分を下にし、刀を中段に構えた。
「ここでのんびり見てるのもあれだし、俺もやるぜ!な、フェアー!」
ロックは肩をほぐし、ファイティングポーズをとった。
「私も協力しよう」
ヘルゼルはヌンチャクを軽く振り回した。
「酒を飲みたい所だけど、そんな暇なさそうだ・・・」
リタイラルは右手にM1887を持つと、散弾の代わりに非殺傷用のゴム弾をリロードした。
「よし、行くぞ!」
クラッシュはタイニーに向って走り出した。
「スピーンアタック!」
クラッシュはタイニーに突っ込みながらスピンアタックをした。しかし、タイニーはガードし、簡単に弾いてしまった。クラッシュはその際少しひるんでしまった。
「タイニー、全く痛くない!」
タイニーはクラッシュの首を掴むと、左手で軽々と持ち上げた。
「ぐ、ぐるじぃ・・・」
クラッシュは必死にもがいたが、タイニーの腕力に逆らうことはできなかった。
「野郎・・・!」
今度はクロックがタイニーに向って走り出した。
「タイニー、投げるの好き!」
タイニーはそう言うとクラッシュをクロックに向って投げつけた。
物凄い速さでクラッシュは飛んで行き、クロックと思いっきりぶつかった。
「い、痛い・・・」
「ボ、ボクは少し立てそうに無いや・・・」
二人はその場に倒れこんだ。
「俺様、接近戦は苦手なんだけどな・・・」
「じゃあ囮を頼む。その時に俺が後ろから刀で殴る」
「分かったぜ。南」
ポトリゲスはタイニーに近づいた。
「今度は俺様が相手だ!かかってこい!」
「今度はお前が相手か!?タイニー、相手する!」
タイニーはそう言うとポトリゲス向ってタックルを繰り出した。ポトリゲスはそれを右に避けた。
「ふぅ、あんなの食らったら骨が折れちまいそうだ」
ポトリゲスはその後もタイニーの繰り出すパンチを素早く避け続けた。
その隙に、南はこっそりとタイニーの後ろに回りこんでいた。
「しばらく眠ってもらおうか・・・」
南は呟くと、タイニーの背中に峰打ちを食らわせた。見事にヒットしたが、タイニーは一切ひるむ様子は無かった。
「こいつ、化け物か・・・!?」
南は体勢を立て直そうとした。しかし、そこにタイニーは素早く後ろを振り返りながら、腕を振り回した。南は運悪くその攻撃に当たってしまった。
「グハ!」
南は大きく後ろに吹き飛ばされた。タイニーはゆっくりと南に近づいた。
「南さん、体勢を立て直して!」
ココはそう言いながらタイニーに近づき、タイニーの背中に跳び膝蹴りを食らわせた。しかしやっぱりタイニーはダメージを受けている様子は無い。
「タイニー、怒ったぞ!」
タイニーは振り返り、まだ着地体制に入っていないココ目掛けてパンチを繰り出した。
「危ない!」
ポトリゲスがとっさにタイニーの前に出た。タイニーのパンチはポトリゲスに直撃した。
「ガハァ!」
ポトリゲスは思いっきり吹き飛ばされた。
「ポトリゲスさん!」
「助けてくれたのはありがたいが、いったん引くぞ」
その隙に南は一気にココに近づき、ココを担ぐとタイニーから距離をとった。
この時点で戦うことが不可能に近いのはクラッシュ、クロック、ポトリゲスだ。クラッシュとクロックは当たり所が悪かったらしく、完全に気絶してしまっていた。
ポトリゲスも、タイニーの強烈なパンチをもろに食らったため、ほぼ意識が無い状態だった。
「ひぇ〜、すごい力だ。でも俺だって負けちゃいねぇ!」
ロックはそう言うとタイニーに一気に近づき、右ストレートを繰り出した。
「タイニー、パンチ得意!」
タイニーはロックの拳目掛けて右ストレートを出した。二人の拳は激しくぶつかり、空中で静止した。
二人は力を入れ続けたが、どちらも下がる様子は無い。
「フェアー、今だ!」
ロックの言葉と同時に、フェアーはロックの右手を伝っていき、タイニーの右手に乗り、そしてタイニーの肩に乗った。
フェアーは大きな口を開けると、思いっきり肩に噛み付いた。
「痛い!タイニー痛いの嫌!」
タイニーは拳を下げると必死にフェアーを振り落とした。フェアーはさっと飛び降りると、急いでロックの肩に乗った。
「あとは任せろ!」
リタイラルがロックの後ろから走ってきて、タイニーに向ってM1887を発射した。ゴム弾はタイニーの腹に思いっきり当たった。
さすがのタイニーも銃の衝撃には耐え切れず、少し後ろによろめいた。
「そおぃ!」
更にヘルゼルがやってくると、ヌンチャクを振り回し、頭に直撃させた。
「タ、タイニーくらくらする・・・」
タイニーは頭をおさえた。
「皆さん!私がやります!」
シクラメンが走ってきて、タイニーの肩にフラワー・スピアを刺した。
「う、うう・・・タイニー、疲れてきた・・・」
フラワー・スピアの効果でタイニーは力が弱くなってきているようだった。
タイニーはその場にゆっくりと倒れこんだ。
「ど、どうやら何とかなった・・・」
シクラメンはほっと息をついた。
「もう、大丈夫みたい。さて、酒だ〜」
リタイラルはそう言うとその場に座り込み、腰につけていた酒のボトルを開け、豪快に飲み始めた。
「私は他の方の治療でもしよう」
ヘルゼルは倒れているポトリゲスの元に行った。
「な、何やったんだシクラメンちゃん?」
ロックがシクラメンに聞いた。
「フラワー・スピアという武器です。これで攻撃されると、どんどん力が弱くなっていくんです。どう、こういうときに非殺傷は役に立つでしょ、南さん?」
シクラメンはそう言うと南の方を見た。
「・・・伏せろ」
南がシクラメンに向って走りながら言った。
「え?」
シクラメンは訳が分からない状態だった。
「伏せろって言ってるんだ!早くしやがれ!」
南は叫んだ。シクラメンはまさかと思い後ろを見た。そこには予想外の光景があった。
何とタイニーが立ち上がっていたのだ。タイニーは右手を大きく振りかぶり、まさにシクラメンを殴ろうとしている所だった。
「や、やめ・・・」
シクラメンは恐怖のあまりどうすることもできなかった。

バン!

突然一発の銃声が鳴り響いた。
タイニーは右手を上げたまま、止まっていた。
そして、タイニーはそのまま前に倒れこんだ。シクラメンはそれを何とか避けることが出来た。
タイニーの後ろ、少し遠い所に一人の影が見えた。
南は最初それが誰か分からなかったが、地平線からゆっくりと太陽が上がりだした時、正体が分かった。
「・・・救世主再び、か」
南は呟いた。
「どうやら事態は最悪なようですね」
正体はザジだった。

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