クラッシュ・ウェスタン2 〜Leute beim Edelstein〜


リボルバーさん作

第六章

荒野を集団で歩いていく者達がいた。
「あ、暑い・・・」
先頭に立っていたクラッシュは暑さにもだえつつも何とか歩いていた。
「クラッシュ・・・休憩しねぇか?さすがに歩きっぱなしは辛いだろ。女もいることだし」
ポトリゲスがクラッシュに向かって言った。
「ダメダメ、早く助けに行かないと・・・うぇ・・・」
クラッシュが答えた。実際彼も休憩したかったのだが、一刻も争う事態、早く救出に行きたかったのだった。

「にしても暑いな・・・シクラメン」
クロックがシクラメンに向かって言った。
「え!?は、はい、そうですね・・・」
シクラメンは動揺しつつも答えた。クロックに話しかけられて気が動転していた。

「リタイラル、酒なんか飲んでて大丈夫なのか?」
ロックはフェアーに水を飲ませながら言った。フェアーもこの暑さにはさすがに耐え切れないようだった。
「酒があったらこのくらいの暑さ、なんでもない!・・・けどアルコールで内側から温まって来た」
リタイラルは酒入りのボトルをちびちび飲みながら答えた。

「・・・もしかしてあなた」
ザジが隣を歩いていたヘルゼルに言った。
「何だ、私に用か?」
「悪魔、ですか?」
「・・・何故分かった」
ヘルゼルは悪魔だった。しかし、悪魔のような悪い心を持っておらず、むしろ悪魔の存在を嫌っていた。
「悪魔がこんな所まで来て、何を企んでるのですか?」
「そんなことはない。大体私は・・・」
「悪魔だが悪魔は嫌い、とでも?」
「そ、そうだ」
「・・・まぁ、あまり変な真似はしないでくださいよ」
「当たり前だ」
ヘルゼルは何故ザジが一瞬で自分の正体が分かったのかに疑問を持った。

「港町の生活ってどんな感じだったんですか?」
ココがウォーラスに聞いた。
「うーん、まぁ平和だったな。漁のときは別だったが。生きるか死ぬかの戦いだからな・・・」
「そんなきつい漁を行っていたんですか!?」
「小魚とかはまだしも、鮫漁とかは海に落ちたら終わりだからな」
「へぇ・・・」
その瞬間、ウォーラスに向かって何かが飛んできた。そして、ウォーラスはそれに直撃してしまった。
その衝撃でウォーラスは地面に倒れこんだ。
「ウ、ウォーラスさん!?」
ココが叫んだ。
「な、なんだと!?皆、武器を持って!戦闘態勢!」
クラッシュが叫ぶと、皆は武器を持って構えた。
クラッシュは辺りを見回した。しかし、どこにも人影はない。
バン!また銃声が鳴り響く。しかし次は誰も当たらなかった。
「・・・敵確認」
ザジはそう言って近くの崖の上を指差した。皆はその方向を見た。
そこには、何者かが銃を持って立っていた。
敵は崖から飛び降りると、クラッシュの目の前に着地した。その姿は鼬の男性だった。
クラッシュは男性に向かってSAAを構えたが、男性は瞬時にそれを蹴り飛ばした。
「あ!」
クラッシュがひるんだその瞬間、男性は両手に持っていたM1887の右手の方をクラッシュに向かって撃った。
ショットガンの衝撃により、クラッシュは後ろに吹き飛ばされ、そのまま倒れた。
「クソ!」
ポトリゲスはシカゴタイプライターを構え引き金に手を引いたが、男性はそれより先に、左手のM1887を撃った。その際に右手のM1887を回転させた。
ポトリゲスも後ろに吹き飛ばされ、倒れてしまった。男性は左のM1887を回転させた。
「これでも食らえ!」
ロックが突進してきたが、男性はそれを左に避けると、後ろを見せたロックの背中に右手のM1887を撃った。ロックは思いっきり前に吹っ飛ばされた。
「何と言う強さだ・・・!」
今度はクロックがジェリコを男性に向かって撃ったが、男性はそれを避け、左手のM1887を撃った。クロックも避けることが出来ず、吹き飛ばされた。男性は両手のM1887を一回転させた。
「なんなのよあんた!」
「この人数相手に、凄すぎる」
ココとヘルゼルが男性向かって突っ込んできた。男性はまずココを右手のM1887で撃った。ココはそれをジャンプでかわした。だが男性は瞬時に左手のM1887を撃った。さすがに避けることが出来ずココは地面に落ちた。
その隙にヘルゼルがヌンチャクを横方向に振ったが、男性はしゃがんで避けると、右手のM1887を回転させながら左手のM1887で下腹部を殴った。
ヘルゼルはその攻撃にひるんだ。そこを男性は右のM1887で撃った。ヘルゼルも吹き飛ばされ倒れこんだ。
「・・・どこかで・・・」
リタイラルは男性を見て呟いた。絶対に彼に会ったことがある。しかし酒が回っていたリタイラルは、中々思い出せない。
その隙に男性はリタイラルに近づき、左のM1887を向けた。リタイラルもあわててM1887を構えるも、何故か撃てなかった。
その瞬間男性は引き金を引いた。リタイラルもやられてしまった。
「シクラメンさん、あなたは私の後ろにいてください」
ザジはワルサーを構えながら言った。シクラメンはザジの後ろに回った。
ザジはワルサーを撃ったが、男性はそれを避けると右手のM1887をしまい、代わりに背中のM70を構えた。
そして、男性は引き金を引いた。
ザジは避けようと思ったが、ここで避けてしまうと後ろのシクラメンに当たってしまう。ザジは身代わりになることを選んだ。
ザジはM70の銃弾に当たり、倒れた。
「や、やめて・・・」
シクラメンはあまりの恐怖に震えながら言った。これだけの人数、しかもかなり実力のある者が次々と倒れてしまった今、シクラメンが勝てる見込みはかなり低かった。
「・・・仕事だ」
男性は呟きながら左手のM1887を構えると、シクラメンに向かって撃った。シクラメンもその場に倒れた。
「任務完了、だ」
男性はそう言って口に葉巻を銜え、ライターで火をつけた。その時、腰につけていた無線が鳴った。
男性はそれを手に持ち、耳に近づけた。
「こちらフレイ。カタパルト、聞こえるか?」
無線の相手はフレイだった。
「こちらカタパルト。任務完了だ」
「そうか、それより大変だ!ニーナが負傷した!しかも宝石まで取られちまった!」
「・・・で?」
「とにかく早く戻って来てくれ!集合地点は指示通りだ!」
「承知した」
カタパルトは無線を切った。
「ゴム弾、か」
突然カタパルトの後ろから声がした。カタパルトは後ろを見た。そこには南が立っていた。
「・・・仲間か」
「ま、そういうとこ。にしても何でわざわざゴム弾を使ったんだ?」
「・・・殺せ、という指示が無かったからだ」
何とカタパルトがクラッシュたちに使用したのはゴム弾だったのだ。
クラッシュたちは命に別状はないものの、全員が気絶してしまっていた。
「ふーん。で、お前等の望みのモンはこれだろ?」
南はそう言ってオパールを右手に持って見せた。
「御前か、奪ったのは」
「奪った?返してもらっただけだろ。それで、お前が敵なら俺も戦う準備は出来てるぜ?」
南はそう言ってオパールをしまい、刀を抜き、両手に持った。
「・・・良かったな。ゴム弾が切れた。実弾で行かせてもらおう」
カタパルトはそう言うとまず右手にM1887を持ち、散弾を五発リロードした。そしてもう片方のM1887も散弾を入れた。
そして最後にM70を持ち、ライフル弾を装填した。そしてそれをしまうと、両手にM1887を一丁ずつ持った。
二人は睨み合ったまま一歩も動かない。
南は相手がどのように出てくるか考えていた。
カタパルトは右手のM1887の南に向けようと手を上げた。その瞬間、南は一気にカタパルトの間合いを詰めた。
カタパルトは右手のM1887を撃ったが、南はそれを予測していたかのようにジャンプし、いとも簡単に避けた。
そして、南は着地し、両手の刀を横に振り払った。カタパルトはそれをバックステップで避けた。
さらにカタパルトは左手のM1887を撃つも、また南はジャンプして避けた。
空中で南は左の刀を鞘に収め、代わりにガバメントを持つと落下しながらカタパルトに向かって数発撃ち込んだ。
カタパルトはそれを走って避けると、両手のM1887を回転させ、着地した南向かって両手のM1887で撃った。
「片手装填とは中々のテクの持ち主だ・・・」
南は呟くと右手の刀で幾つかの散弾を切り落とした。数発の鉛玉が体に当たったが、南にたいしたダメージは入らなかった。
「・・・御前、化け物か・・・?」
カタパルトはそう言いながら両手のM1887を回転させた。
「ま、そんな感じかもな」
南はそう言って左手のガバメントを撃った。カタパルトは走って避けるが、銃弾は急に爆発を起こした。
「クソ・・・」
爆風に巻き込まれたカタパルトは片膝をついてしまった。
そこ目掛けて南は一気に突っ込んできた。
「爆発型の銃弾、結構作るの時間かかったんだよな。でも作った甲斐があった」
南はそう呟きながら刀を振り下ろした。
しかしカタパルトはひるんだのが嘘だったように素早く右に避け、南の後ろに回りこんだ。
「勝負有り、か」
カタパルトは呟くと右手のM1887を撃った。
無防備な上、至近距離から発射された散弾をさすがの南も避けることは出来ず、全てヒットした。その衝撃で南は前に吹っ飛ばされた。
カタパルトは倒れた南に近づき、南の頭にM1887を突きつけた。
南は息こそあったが、決して戦うことは出来ないレベルの負傷を負っていた。
「死ね」
カタパルトはM1887の引き金を引こうとした。
「俺もここまでか・・・」
南は消えそうな声で呟いた。
「・・・クソ」
カタパルトはそう言ってM1887を南の頭から離した。
その時、カタパルト向かって何者かが突っ込んでいった。それに当たったカタパルトは後ろに飛ばされた。
南は何者かがいることは分かったが、誰かまでは分からなかった。
「まだ仲間が残って居やがったのか」
カタパルトは呟くと左手のM1887を何者かに向けた。その瞬間その何者かは手に持っていた剣のようなものを横に振った。カタパルトはそれをバックステップで避けた。
しかし、その何者かは剣先をカタパルトに向けた。
「油断はよくないよー」
何者かがそう言った瞬間剣先から銃弾が発射された。
そんなことを予想してなかったカタパルトは胸に銃弾を食らった。
「グッ・・・」
カタパルトはその場に片膝をついた。
「どうする?逃げるの?それともまだ戦うの?」
何者かはそう言ってまた剣先をカタパルトに向けた。
「・・・また会うこともあるだろう」
カタパルトは呟くと腰につけていた球体の物を地面に投げた。その瞬間激しい閃光が発生した。
何者かはあまりの眩しさに目を押さえた。
閃光が収まり、何者かが目を開けると、もうその場にカタパルトはいなかった。
何者かは剣をしまうと、南に近づいた。
「あの〜、大丈夫?」
何者かが南に手を差し伸べた。
「・・・悪いな」
南はそう言って手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。
そして、その何者かの顔を見た瞬間驚いた。
「お、お前は・・・リサ!?」
そう、その何者かの顔は一年前、共に戦ったリサに似ていたのだ。
「リサ・・・?私はペタという名前。さすがに襲われてる所を見逃すわけには行かないから助けてあげたの」
ペタという名の女性が言った。
「ペタ・・・か。人違い悪かった。とにかく助けてくれてどうも。じゃあな、このご時世だから気をつけろよ」
南はそう言ってその場を去ろうとした。
「あの、クラッシュという人知ってない?探してるんだけども」
ペタが言った。
「クラッシュだと?何の用だ?」
南はペタを睨みながら言った。クラッシュのことを知っているとなるともしかしたら宝石狙いの人物かもしれない。南はそう考えた。
「クラッシュって人と一緒に戦いなさい!ってある人に言われてね、それでずっと探してたんだ。でもどこにもいなくてさー」
「ある人とは誰のことだ?」
「それは言っちゃダメ!って言われたから言えないや」
「そうか・・・とりあえずクラッシュはあれだ」
南はそう言って倒れているクラッシュを指差した。
リサと似ている女性、一緒に戦えと言う命令、そして名前を言ってはいけないというある人物。南は大体の予想はついていたが、それを口にはしなかった。
ペタは気絶しているクラッシュの所に行った。
「あのー、クラッシュっていう人ですよねー」
ペタはクラッシュの肩を叩いた。クラッシュはゆっくりと目を開けた。
「う、うーん・・・ん?」
クラッシュはその場に立ち上がった。
「何でおいら生きてるの?あいつに撃たれたはず・・・」
「お前の倒れてた所を見てみろ」
南がそう言いながらクラッシュに近づいた。クラッシュは言われたとおり地面を見た。そこには球体状の何かが落ちていた。クラッシュはそれを手に取った。
「・・・何これ?」
「ゴム弾。所謂非殺傷を目的とした銃弾だ。良かったな、命が助かって」
南はそう言った後、他の倒れている者達を起こしに行った。
「でさー、あなたがクラッシュなんだよね」
ペタがクラッシュに言った。クラッシュはペタの顔を見た瞬間驚いた。
「リ、リサさん!?久しぶり!」
「あなたも間違えたー。そんなにリサって人に似てるのかな?私はペタ。これからあなたの戦いのサポートをさせてもらうから、よろしくー」
「・・・ごめん、名前間違えて。てかいきなり何言ってんだよ、見ず知らずの人を危険な戦いに巻き込めるわけ無いじゃん!」
その時、目が覚めたポトリゲスがペタの所にやって来た。
「お前がリサに似てるって噂のペタ、だな。保安官、こっちは人員が不足してるんだし連れて行っていいんじゃねーのか?俺様は賛成だぜ」
「私もいいと思いますよ。少なくとも敵ではないみたいですし」
ザジがそう言いながらペタの所にやって来た。
「二人ともそう簡単に言うけどさ・・・」
「着いて行っていいんだ、やったー」
ペタはクラッシュの話を一切聞かずに喜んだ。
「も、もういいよ・・・勝手にして・・・」
クラッシュはそう言うとまだ倒れている者達を起こしに行った。
「俺様はポトリゲス。よろしくな、ペタ」
「私はザジという者です。よろしくお願いします」
二人がペタに挨拶した後、他の目が覚めた者達も続々とペタに挨拶しに来た。
全員命には別状は無かった。
一通り挨拶が終わり、一行は町へとまた歩いていった。

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