証拠


サムさん作

第一話「水晶窃盗事件」

「フン! ‥‥こいつが、例のブツだよ。」
「そいつを売れば、かなりの金になるはずだ。‥‥今日は、これで簡便してくれよ。」

「ほぅ‥‥このようなモノ、どこで手に入れたのだ? ‥‥簡単に手に入るブツではないだろう?」
「金は持ってきたんだ。 質問には一切答えねえ。帰らせてもらうぜ。」
「私の言う事が聞けんというのかね?」
「知るかッ!」

ガチャリ!

「‥‥きっと、後悔するだろう。 この後、キミは‥‥」










永遠に出る事のない虚無の空間に閉じ込められるのだから、な。

5月 20日
ココ探偵事務所

ココ「ほら! お兄ちゃん!」
クラッシュ「あ、ああ‥‥コ、ココか。」
ココ「どうしたの? 顔がマッサオになってるわよ。」
クラッシュ「いや‥‥確か、今日ってオイラの初仕事だよね? だから、ちょっとキンチョーしちゃって‥‥」
ココ「あら、そう。 でも、探偵がちゃんとしていないと、事件は全く解決はしない。 むしろ悪化するわよ。」
クラッシュ「そ、それはわかっているけど‥‥! どうしてもキンチョーちゃんだ‥‥」
ココ「‥‥まぁ、お兄ちゃんの気持ち、わからないでもないわね。」

クラッシュ「事件の方はだいたい目を通しているよ。」
ココ「へぇ。 じゃあ、ちょっとまとめていってくれる?」

被害者‥‥スパイロ(12)
事件発生日‥‥5月19日 午前零時〜午前6時の間
事件名‥‥窃盗事件

スパイロ氏は家で睡眠。その間午前零時以降に水晶を何者かに盗まれる。
心当たりもなく犯人の検討がつかない。


ココ「へぇ。犯人がまったくわかってないのね‥‥。」
クラッシュ「詳しい事はよく知らないんだけど、現場に行けばわかると思う。 犯人はまったく見当がつかないんだけど、ね‥‥」
ココ「なかなか難しいんじゃない? あたし、変わろうか?」
クラッシュ「コ、ココの助けなんていらないさ! 俺だけの力で解決してやる!」
ココ「ふふっ。その心意気よ。 がんばって、お兄ちゃん。」
クラッシュ「おう!」

同日
スパイロ宅

クラッシュ「‥‥とは言ったものの。 まったく犯人の見当がついていないんだよなあ‥‥」
クラッシュ「トホホ‥‥はじめての事件でこんな調子‥‥むいていないのかな、オイラ。」
???「‥‥クラッシュ!」
クラッシュ「お、おう! スパイロか!」
スパイロ「やあ。クラッシュ! 今日は、僕のためにきてくれたのかい?」
クラッシュ「そ、そりゃあそうだよ。 だって、事件を担当しているからね。」
スパイロ「わあ。 ありがとう。 で、犯人は見つかったの?」
クラッシュ「‥‥そんなに早く犯人が見つかったら、苦労しないよ。」
スパイロ「それもそうだね。」
クラッシュ「いい機会だ、今のうちに事件の内容について引き出そう!」

クラッシュ「スパイロ。」
スパイロ「な、なんだい?」
クラッシュ「事件の事、詳しく教えてくれないか? オイラ、詳しくは知らないからさ。」
スパイロ「う、うん。いいよ。」

まず‥‥被害者はこの僕で、僕の水晶‥‥クリスタルが何者かに盗まれたんだ。
僕はいつも午後11時30分ぐらいに寝てるんだよ。
寝る時は、確かにあったんだよ。 僕のお気に入りのクリスタルが‥‥。

僕はいつも午前6時におきてるんだ。
その時には、もうすでにクリスタルは‥‥

クラッシュ「なるほど。君が寝ている間に盗まれたのか。」
スパイロ「そう、みたいだね。」
クラッシュ「鍵はかけてなかったのかい? 家の扉に」
スパイロ「もちろんかけていたさ!」
クラッシュ「じゃあ、家の窓とかは?」
スパイロ「一応全部の窓にカギをかけたはずだよ。」
クラッシュ「じゃあ、泥棒はどこから入ってきたのかな?」
スパイロ「うーん‥‥」
クラッシュ(まぁ、それがわかったら苦労しないよね。)
スパイロ「‥‥! 1つだけ、心当たりがあるよ。」
クラッシュ「‥‥? 詳しく教えてよ。」

スパイロ「1つだけボクの家に入れる通路があったかもしれないんだ。」
クラッシュ「な、なんだって!!」
スパイロ「うぅん、お風呂の通気口なんだけどね。」
クラッシュ「通気口?」
スパイロ「浴室の天井に通気口があるんだよ。 そこが通路になってるってウワサは聞いたことあるよ。」
クラッシュ「通気口‥‥!」
クラッシュ「ちょっと試してもいいかな?」
スパイロ「いいよ。 すきにしてよ。」

浴室
クラッシュ「じゃあ、この通気口のフタを開けるよ。」

‥‥ガチャリ‥‥

スパイロ「ど、どう?」
クラッシュ「‥‥本当だ。」
クラッシュ「通気口は移動をするための通路になっているみたいだ。」
スパイロ「じゃあ、犯人はそこから?」
クラッシュ「多分、そうだと思う。」
クラッシュ「じゃあ、今回の事件の犯人は‥‥」
クラッシュ「このマンションに詳しい人物‥‥ってことになる。」

クラッシュ「そして、もう1つ。」
クラッシュ「犯人は、その通路を通った‥‥」
クラッシュ「でも、あの通路は外部からは入ることはできない。」
クラッシュ「だとしたら、犯人はどこから通路に入ったんだ?」

クラッシュ「‥‥わかったぞ‥‥!」
スパイロ「な、何が?」
クラッシュ「今の2つの情報を総合して考えれば‥‥」
クラッシュ「犯人は、このマンションの住民と考えられるんじゃないのかな?」
スパイロ「ど、どういうことさ!」
クラッシュ「まず、このマンションに詳しい人物。」
クラッシュ「マンションの住民なら、このマンションついて詳しいのもアタリマエなんじゃないのかな。」
スパイロ「な、なるほど!」
クラッシュ「そして、犯人の通気口進入経路。」
クラッシュ「多分、このマンションのどこの部屋からでも通気口の通路は通れるはずだから」
クラッシュ「その犯人も、自分の部屋から通気口の通路に進入したってことにならない?」
スパイロ「うーん、そうみたいだねぇ‥‥。」

クラッシュ「どうやら、いろいろなことがわかってきたみたいだね。」
スパイロ「‥‥」
クラッシュ「? どうしたの、スパイロ?」
スパイロ「犯人の心当たりがあるかもしれないんだ。」
クラッシュ「な、なんだって!! 詳しく教えてくれ!」

スパイロ「リプトーって言うんだけどね。」
クラッシュ「‥‥りぷとー?」
スパイロ「どうやら‥‥さまざま組織に通じている「ワル」みたいだよ。」
クラッシュ(さまざまな‥‥組織?)
スパイロ「アイツはこのマンションの2Fにすんでるよ。」
クラッシュ「2F‥‥ここの階だねぇ。」
クラッシュ(そのリプトーってヤツ、怪しいな。)
クラッシュ「じゃあ、そのリプトーってやつにあってくるよ。」
スパイロ「うん。」
クラッシュ「あ、ちょっとカンシキさんに連絡をとってくれないかな?」
スパイロ「鑑識?」
クラッシュ「うん、このメモを渡してほしい。」
スパイロ「‥‥なんだい、このメモは。」
クラッシュ「気にしないでよ、オイラはリプトーにあってくる。」
スパイロ「う。うんわかった。」

リプトーの部屋前

ピンポーン ピンポーン

クラッシュ「‥‥‥‥」

ピーンポン ピンポーン

クラッシュ「‥‥‥‥」

バンバンッ!!(扉を叩く)

クラッシュ「‥‥えぇええええーい!!!」

ガンガン!!! ドガッ!!(扉をこじ開ける)

クラッシュ「中に入らせてもらいますよ‥‥」


‥‥‥‥‥


人の気配がない‥‥


‥‥‥‥

‥‥‥

‥‥



このニオイは‥‥



クラッシュ「血ィ‥‥ ち、血のニオイだ!!」
クラッシュ(どういうことだッ!!)

クラッシュ「ここがリビングのようだ。 テレビやテーブルが置いてある。」
クラッシュ「‥‥! あの壁によこたわっているのは‥‥」




クラッシュ「こいつはまさか‥‥リ、リプトー!?」
クラッシュ(死んでいるッ! そんな、バカな‥‥ッ!!)
クラッシュ(腹に弾痕がある、凶器は恐らくピストルか‥‥)
クラッシュ「とりあえず、警察に連絡しよう!」

‥‥ガタンッ‥‥

クラッシュ「刑事さんッ!」
ケイジ「ん、なんだね君は。」
クラッシュ「窃盗事件どころではありません!! 殺人事件がありました!!」
ケイジ「な、なんだとおおおッッ!! どこだッ!」
クラッシュ「リプトーの部屋ですッ!」
ケイジ「ええい! すぐに行くッ!!」

ケイジ「こ、これはッ! 確かに死体だッ!」
ケイジ「ふむ、銃殺か‥‥」

ケイジ「カンシキィ!!」
カンシキ「はッ!」
ケイジ「弾痕をホジくり出せ‥‥!」
カンシキ「はッ!」

ケイジ「フン‥‥ホジくり出せたようだな。」
カンシキ「はッ! 線条痕はハッキリ残っているようでありますッ!」
ケイジ「なるほどな‥‥。」
クラッシュ「‥‥あの‥‥」
ケイジ「ん、何だ?」
クラッシュ「何ですか? その、せんじょうこんって」
ケイジ「フン、あきれた探偵ボウヤだな。」
クラッシュ「え。」
ケイジ「センジョーコンっつぅのは、ピストルの指紋みたいなもんだァ」
クラッシュ「しもん‥‥?」
ケイジ「凶器の拳銃により発射された弾丸に残るキズのことさ。」
ケイジ「そのキズとピッタリ一致するのが、その凶器のピストルってわけさ。」
クラッシュ「へぇ‥‥(わかったような、わからないような)」
ケイジ「まァ‥‥今回の事件の犯人は多分みつからねぇナァ。」
クラッシュ「ぇ」
ケイジ「容疑者が不特定多数だァ、見つかるわけがねェ。」
クラッシュ「た、確かに‥‥。」
ケイジ「お、被害者の服から紙が出てきたぞォ。」
クラッシュ「これは‥‥メイシ、かな?」
ケイジ「あァ、こいつァウデキキの弁護士だったァらしいなァ」
クラッシュ「やはり、この被害者はリプトーだったみたいだね。」
ケイジ「そうだなァ‥‥。」
ケイジ「あともう1枚紙があるぞォ、こいつはァ‥‥? 手紙かァ」
クラッシュ「『あの時のお前の罪を消したくば、私たちに2000万円用意しろ。』‥‥」
ケイジ「なるほどなァ‥‥そういうこと、だったかァ」
クラッシュ「どうやら、最初の事件は解決したみたいだ。」
ケイジ「おゥ、この事件は俺たち警察にまかせろやァ お前には荷が重ィ」
クラッシュ「あ、ああ。 わかった。」

クラッシュ(情報は集まってきた。)

クラッシュ「おい、スパイロ。」
スパイロ「お、クラッシュ、どうしたの? この騒ぎは!」
クラッシュ「この騒ぎはおいておいて‥‥」
クラッシュ「解決したよ。 君の事件は。」
スパイロ「お、おぉおぉッッ!!」
クラッシュ「この事件の真犯人は‥‥!!」

クラッシュ「やはり、リプトーだったんだよ。」
スパイロ「やっぱりそうかッ!! アイツめッ!」
クラッシュ「盗まれた水晶は、売ればいくらぐらいになるのかな?」
スパイロ「さぁ‥‥2000万円ぐらいにはなるんじゃないかな。」
クラッシュ「ほほぅ、ピッタリ一致する。」
スパイロ「え?」
クラッシュ「この証拠品を見てほしい。 リプトーの動機を物語る証拠ッ!」

スパイロ「これは‥‥手紙?」
クラッシュ「リプトーはこの手紙の通りの行動をしたんだよ。」
クラッシュ「君が水晶を持っていることを知っていて、通気口を通って水晶を盗んだんだ。」
スパイロ「‥‥その手紙の送り主はダレなんだい?」
クラッシュ「わからない。 でも、この手紙の通りに犯行を行ったことはマチガイないはずだよ。」
スパイロ「なるほど‥‥」
クラッシュ「個人的な事なんだけど‥‥」
クラッシュ「この手紙の送り主とリプトーを繋ぐ証拠品 これなのかもしれない。」


スパイロ「それは、メイシかな?」
クラッシュ「リプトーが弁護士だったことが、この証拠品は立証している。」
クラッシュ「この弁護士時代のときに、何かトラブルがあった。 ‥‥そう考えられない?」
スパイロ「さぁ‥‥よくわからないや。」
クラッシュ「そして、スパイロが言っていた組織に通じているってハナシ。」
クラッシュ「その話もツジツマが合う気がするんだ。」
クラッシュ「リプトーの本意で組織に通じているわけではなく。」
クラッシュ「リプトーは組織に通じるしかなかったんだと思う。」
スパイロ「なるほどねぇ‥‥。 で、結局ボクの水晶は帰ってくるのかな?」
クラッシュ「うッ! そ、それは‥‥」
スパイロ「じゃあダメじゃん」
クラッシュ「ぐッ!!」
スパイロ「早くリプトーを追い詰めようよ。」
クラッシュ「いや‥‥もうリプトーは‥‥誰かに殺されたんだ。」
スパイロ「な、なんだってェ!?」
クラッシュ「その殺した男こそが、今水晶を持っている人物でもある。」
スパイロ「そいつが今回の事件の本当の黒幕‥‥ッ!!」


クラッシュ「オイラにできることはこれくらいだと思う」
スパイロ「そうかい‥‥。」
クラッシュ「じゃ、またいつか会おうね。」
スパイロ「う、うん‥‥。」

結局、何もわからないまま事件は終わった。

この時は思いもしなかった。

これから始まるオイラの物語が

全て一本の線で繋がっているなんて、ね。




第1話「水晶窃盗事件」 終わり

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