3話　「精霊との邂逅」

2017/07/18（火）11：59：31（8年前） 更新

だい１しょう

今回のステージは「えんばんいわのはて」。兄の代わりに、ココは少しずつ進んでいく。

ココ「いきなりゴックンと出くわすなんて・・・でも私が知ってるのは黒い方だったけど、さっき見たのは赤かったわ。原種なのかな。」

と思いながら進んで行くと、見覚えのある箱を見つけた。

ココ「あ、アクアク箱はっけん！それっ。」

アクアクを見かけたらすぐに呼び出すと言う癖がもうついているのか、後先考えずにアクアクを呼び出してしまった。

アク「や〜クラッシュ・・・ん？クラッシュじゃないのか。」
ココ「（あ、そうだ。この時代のアクアクさんはまだ私のこと、知らないんだっけ・・・。つい開けちゃった。）」
アク「おヌシ。一体誰じゃ。見た所、怪しい人ではなさそうじゃが。」

ここで会おうが会わまいが、いずれ会うことになるので、間違ったことをいうのは少々まずい。

ココ「（正直に言っておこう。）私は、ココ・バンディクーっていいます！はじめまして。」
アク「は、はじめまして。礼儀正しい子じゃの〜。わしはアクアクというのじゃ。それにしても、バンディクーとは奇遇じゃな。わしが冒険の付き添いをしとる奴もバンディクーなんじゃ。何か関係はあるのかの？」
ココ「（いずれちゃんとあとで会うし、ウソとかはまずいかな。これも本当のことを。）アクアクさん！クラッシュお兄ちゃんが、いつもお世話になっています！」

ココは元気に答えた。

アク「何・・・？おヌシ、あやつの妹なのか。カ〜ッカッカッカ！これは知らなかったわい。可愛らしいのお。こんな妹がおったのか。」
ココ「えへへ。」

女の子なので、素直に嬉しい様子。
しかし、アクアクには疑問が生まれた。

アク「ん〜じゃが妙じゃの〜。あやつとは兄妹なんじゃろ？クラッシュとは、全然似とらんのじゃが。」
ココ「そ、それは・・・そうですね・・・（確かに似てないカモ）。」
アク「クラッシュと違って、おヌシの方が賢そうで落ち着いてて礼儀よくて、首がはっきりしておるわい。」

随分とべた褒めである。なんだか照れくさいと思いつつも、アクアクの疑念には不安になった。

アク「本当にあやつの妹かの〜？最近ここらはちと物騒じゃからの〜。かわいい顔して、何かやつに近づこうとしとる悪いことを考える動物もおるかもしれん。すまんが、なんか兄妹っぽいところ、見せてはくれんかの〜。」
ココ「（え〜・・・そんなこと言われてもなぁ〜。）」

ココは考えた。どうすればあの兄と似てるところ、なんて見せればいいのだろうか。変な難関にでくわしてしまったようだ。

アク「クラッシュの特技、特徴なんか・・・。何か知っとるじゃろう。」

特技・・・そうか、ダンスが好きなんだっけ。

ココ「（やるしかない、見よう見まねで！）じゃあ、お兄ちゃんのダンスをします！」

左を向いて両手を広げ、次に右を向く。あれ、足は上がってたっけ。で、両手を上から下に振る。同時に足も振る。あと、両腕をまっすぐにして、後ろにぐいっと引きながら90°ぐらい回って、両腕を上げ下げしつつ反対方向に向く・・・ってちょっと足がぎこちないかな。それで最後に後ろを向いて・・・。

ココ「マ！」
アク「ほう、見覚えのあるダンスじゃな。」
ココ「（ホッ。信じてくれたかな。）」
アク「じゃがおヌシの踊りには若干の余裕がなさそうじゃな。やや不自然な気がせんでもないわい。もひとつなんか見せてくれんかの。」
ココ「え〜！ダメなの！あれ〜（せっかく頑張ったのに〜）」

ちょっとだけ楽しみながら踊ったのは内緒だ。
ココはまた考えた。ダンス以外の、クラッシュっぽい何かを見せねばならないようだ。

ココ「（う〜ん、何も思いつかない・・・。）」

しかし、考え終わるより前に、体が勝手に動いていた。ポケットにあったスマホを取り出し、カメラモードを起動し、対象を内側にした。そして

ココ「レロレロレロレロレロ！！」パシャッ！

気がおかしくなったのか、舌を出し、焦点が合わないように目を上下させ顔を横に振り出した。しかもポーズをつけて、自撮りまでして！・・・さっきまでとの様子の違いに、アクアクも少し驚いていたようだ。

アク「ホェ！？おヌシ、あの・・・。」
ココ「・・・へ？どうしたんですか？」
アク「すごい変顔をしておったぞ・・・。どうやら写真も自分で撮っておったようじゃが。」
ココ「しゃしん？どれどれ・・・。え！？何この顔！（しかも私の！）」
アク「あれはまるで・・・。」

急にアクアクの顔が険しくなったので、ひょっとすると、はたから見れば他人をバカにしたような顔をしてしまったせいか、精霊の怒りでも呼んでしまったのではないかと、ココは身震いした。

ココ「（アチャ〜どうしよ〜。なんか怒らせちゃったかな〜・・・。）」
アク「おヌシ・・・やっぱりクラッシュの妹じゃな！しっかり者に見えるが、あやつのバカっぽさは同じじゃわい！！」
ココ「（ぐへ〜っ。なんじゃそりゃ〜。あんまり嬉しくないような・・・。あんな顔したの初めてなんだけど。）」

ダンスだってそうだが、した覚えのない、しようと思ったこともさらさらない、おバカな行動が簡単にできるようになってしまった。普通なら理性か何かがストップをかけそうだが、それがやや効かなくなっているようだ。また、今まで兄と似てるなど言われたことがなかったので、こんなところで似てるとアクアクに言われ、少々複雑ではあった。

アク「普通の感覚ではあんなことはそうそうできんわい。それをよっぽどノリノリでできるとは、おヌシらはタダ者ではないのう、はははは！」
ココ「（そういえばあんまり恥ずかしさがなかったような。・・・まさか。タイムスリップの影響で、私の理性が変になっちゃったのかな。さ、さすがにそんなことは・・・。）」

タイム・ネジネジマシーンの副作用なのか、クラッシュと生活しているうちに頭のネジが緩んだのかはわからないが、兄のバカっぽさが感染（うつ）ってしまったのは間違いないようだ。じっとしていれば、ダンスや変顔自撮りをしたいと思うようになってしまっている。もちろんパソコンも使いたいので、それ一色に染まってしまったわけではないが。

ココ「（う〜。な、なんでこんなことに・・・。）」
アク「いや、疑ってしまって悪かったわい。そうか、兄を手伝おうとする気持ち。素晴らしいぞよ。美しいのぉ。」

正直なところ、事故と成り行きではあるが。
とりあえず、（ココにとっては不服ではあるが）アクアクの疑問が晴れたので、なんとか次のステップに行けるようだ。

ココ「（ま、まぁいいっか。そこまで変になったわけでもないし・・・。）」
アク「改めて、わしはアクアクじゃ！この島の精霊じゃ。よろしく頼むぞよ。ココ！」
ココ「よろしくお願いします！」
アク「ここでいると、ワクワクするの！な〜んつって！」
ココ「・・・ふふっ（この頃から変わらないんだなぁ、アクアクさんも）。」

普段なら寒気を感じるところだったが、知っているという安心感があったからなのか、少し微笑ましかった。

アク「お？今、笑わんかったか？」
ココ「い、いえ。気のせいじゃないですか？」
アク「そうかのぉ・・・。」

少し残念そうにしていたが、すぐに気を取り直した。

アク「さてと、円盤岩に気をつけながら進むのじゃぞ！！」
ココ「はいっ！」

こうして、過去のアクアクとの出会いも果たした。
ココの冒険は、まだ始まったばかりだ。

ココ「（次はどんなポーズとろ・・・ってまた変なこと考えてる！う〜〜・・・。）」

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