パニックコメディ Funny Agony


回転撃さん作

〜Happening〜



監視ロボが突然コルテックスに襲いかかってきた事にも驚いたが、それをウォーラスがいとも簡単にあしらってしまう事にも驚かされた。
「ウォーラス、お前一体今までどこにいたんだ?!」
「いやぁ、つい夢中になっちまってよぉ」
ウォーラスはそう言って腰にさげていた大きな袋を持ってコルテックスに突き出した。どうやらその中に大量に入っているものは彼が仕留めたネズミらしい。
「ほれ」
「あ・・・あぁ、ごくろう」
コルテックスは小さくそう言って彼の袋を受け取った。すると、ウォーラスは早くもきびすを返して向こうへと歩き出していった。
「じゃあな、また溜まったら持ってってやらァ」
取り残されたコルテックスはウォーラスが見えなくなると、再び動けなくなった監視ロボットの方を見た。一体何故、このロボは突然コルテックスを襲ったのだろうか。
この事に関してはエヌ・ジンに訊いてみた方が早そうだ。とりあえず、ウォーラスからもらったこの大量のネズミをウカウカのもとへ届けて彼のご機嫌をとることにした。
エヌ・ジンにロボの事を訊くのはその後だ。そう決めると、コルテックスは自身の研究所に戻っていった。

その頃、タイニーとコモド・モーは未だに1匹のネズミを追いかけていた。あと一息でネズミを捕まえようというところでお互いに邪魔し合ってしまうのである。
「ハァ・・・ハァ・・・こんな所で争ってる場合じゃないんだな!タイニー、一旦おらと協力するんだな」
「ガウ〜・・・分かった」
そう言うと、モーはしまっていた剣を取り出してネズミ目がけて思い切り投げ飛ばした。その剣はネズミのすぐ目の前に突き刺さり、ネズミは一瞬足を止めた。その隙にタイニーは目にもとまらぬ速さで加速する。
そして、ついにタイニーの手がそのネズミを捉えた。タイニーはそのネズミを掴み上げる。
「やったーーー!捕まえたーッ!」
だがその瞬間、タイニーの手からネズミがはじき出されてしまった。横の通路からリラ・ルーが飛び出してきて、そのまま彼がタイニーの手を弾いてネズミを奪ってしまったのだ。
「ッ!!?」
「あ!リラ・ルー!」
「ヘッへッへ、まずは1匹目いただきましたで〜。別ルートから先回りして正解やったわ」
「しまった・・・!待て〜〜〜!!」
こうして、モーはリラ・ルーを追いかけていく。せっかく捕まえたネズミを奪われたタイニーも勿論面白い気分ではない。彼もまた怒りの表情を浮かべながらリラ・ルーを追いかける。この3人の争いはまだまだ続きそうだ。

「待てこの野郎ーーー!!」
一方、コモド・ジョーとコアラコングの2人もまたネズミを追いかけていた。ネズミが曲がった方向へジョー達も曲がると、その目の前にはコルテックスが歩いていた。
「なっ・・・!?」
猛スピードで回廊を駆け抜けていたジョーはその勢いを瞬時に止めることはできず、そのままコルテックスと正面から衝突してしまった。その隙にもネズミはどんどんジョー達から遠ざかっていく。
「ってて、オイ!何シしてくれてんだァ!ネズミを取り逃がシしちまったじゃねぇか!!」
「お〜いてて・・・それは悪かったな。だが、ここを曲がる前にお前がさっさと捕まえてしまえば済んだ話ではないか」
「ど〜んな反論だよススそりゃぁ!屁理屈にも程があんじゃねぇか!」
すると、その様子を傍観していたコングが何かに気付いた。
「オイ、コルテックス。その袋は何だ?」
「あぁ、これか?これは捕まえたネズミだ」
この一言にジョーとコングは一気に表情を変えた。
「な、何!!?それ全部か!?パンパンじゃねぇか!」
「あぁ・・・まぁな」
2人は顔を見合わせると、コングが取ってつけたような表情をしながら言った。
「なぁ、それ。俺達がお前の研究所の所まで持って行ってやろうか?」
「何?」
思いがけない一言だった。正直に言って今はネズミをウカウカのもとへ届けに行くよりもエヌ・ジンに監視ロボの事を訊きに行くのを優先させたいところだったからだ。
「いいのか・・・?じゃあ頼む」
「よっしゃ、任せろ!」
そう言ってコングはコルテックスから大量のネズミが入った袋を受け取った。何故だろう、コングとジョーが興奮した様子であるように見える。
「いいか?ワシの研究所にはウカウカ様がいる。ちゃんとそのネズミはワシが取ってきた物だと伝えておけよ?(ホントはワシが捕まえた奴じゃないけど・・・)」
「分かったよ」
そう言って2人は足早にコルテックスのもとを去っていった。
「・・・大丈夫かァあいつら?まぁ、いいか」
コルテックスもエヌ・ジンの研究所を目指して歩き出す。

コルテックスから大量のネズミを手に入れたジョーとコングは、ここへきて異常な盛り上がりを見せていた。
「よっっっシシしゃァァア!こんだけのネズミがありゃまず間違いなくあのゴリラ野郎に勝てるぜェ!」
「一応何匹入ってるか見てみようぜ」
「ああ、ススそうだな!」
そう言って2人は袋の口を開けて中の様子を覗いてみた。そこにはやはり大量のネズミが敷き詰められるように入っており、正直言ってこんな賭けをしていなければ喜べるような光景ではなかった。
「うっ、こいつはなかなか数え甲斐がありそうだ・・・」
2人は協力してネズミを袋から出していき数え始めた。

その頃、ディンゴは自分の小屋が崩壊した原因が分からないものかとその残骸を調べていた。すると、ある場所が目にとまった。地下の隠れ家へと続く扉があった場所だ。
その周囲だけ妙に木材が落ちておらず、まるでそこの木材だけどかされたかのようだったのだ。誰かがここを通ったということだろうか。もしかしたらその人物がこの小屋を壊した犯人なのかもしれない。
そうでなくとも、ここで立ち往生しているよりはいくらかマシなような気がした。こうしてディンゴは再び隠れ家へと続く地下通路に入っていくこととなった。

一方、アテナの捜索を続けるクラッシュ達はひとつひとつの部屋を慎重に調べて回っていた。
「・・・ここにもいないみたいね」
ココがそう言うと、アクアクが静かに答えた。
「うむ、次の部屋を当たるか」
その時、クラッシュはその部屋の外から何かの気配がこちらに近づいてきているのに気付いていた。
「・・・何か来るよ!」
「え!?」
今まさに扉を開けるためドアノブに手をかけようとしたココは即座にその手を止めた。そして、すぐにその部屋全体を見回して隠れられるような場所を探す。
「・・・あそこッ!」
ココが指差した方を見て、3人もそこに向かって行った。そして、ついに部屋の扉が開けられた。部屋に入ってきたのはウォーラスだった。彼は部屋全体の様子を少しの間眺めた。
「・・・おかしいな。さっきこの辺で物音がしたような気がしたんだが」
そう言って彼は部屋の中にネズミが潜んでいないかと足を進める。確かにこの部屋には3匹のフクロネズミが隠れているが、ウォーラスはまだそのことに気付いていない。
それもそのはずで、クラッシュ達が隠れたのはこの部屋の脇を通っている排気管の中だったのだ。本当はこのままこの中を通ってこの場を逃げ切りたいところだったが、体格的にクランチはかなり動きづらい。
それに動いた時の音がもしウォーラスの耳に入ってしまったら厄介だ。3人は息を殺してウォーラスが部屋から出ていくのを待った。すると、彼は突然大声を上げた。
「見つけたぞネズミ野郎!」
(!!!ばれたッ・・・!?)
焦る3人だったが、ウォーラスが見つけたのはクラッシュ達ではなく、本物のネズミの方だった。彼はネズミを追いかけまわし、ネズミが慌てて部屋を出ていくとウォーラスもその後を追って勢いよく部屋を出ていった。
クラッシュ達は彼が部屋を出ていったのを確認するとホッと胸をなでおろした。
「・・・よく分からんが助かったみたいだな」
窮屈な排気管から出てきたクランチがそう言った。
「そうじゃな、さ、早く行くぞい」
アクアクがそう言うと、クラッシュ達は一様にうなずいて部屋を出た。

コルテックスは監視ロボの暴走の原因を聞くため、エヌ・ジンの研究所に足を運んでいた。エヌ・ジンは巨大なメカを作る事を生業としているため、その分彼の研究所も広い。
おそらく彼がいるであろう最深部の開発室までコルテックスの足で辿り着くのにはそれなりに時間がかかった。やっとの思いでその開発室に入ると、相変わらずエヌ・ジンは他の監視ロボの調整を行っていた。
「やぁ、エヌ・ジン」
エヌ・ジンは作業に没頭していたのか、コルテックスが話しかけて初めて彼がやってきた事に気がついたようだ。
「おぉ、これはコルテックス殿。わざわざこんな所までいらっしゃってどうなさったのです?」
「さっき回廊で監視ロボットを見たが、どういうわけかワシに襲いかかってきたんだ・・・これはどういうことだ?」
「何ですと!?それは真でございますか!」
「ああ」
するとエヌ・ジンは少し考え込んだ様子になった。
「(おかしい・・・さっきの調整で標的のプログラミングは完璧に修正したはず・・・!)・・・分かりました。拙者がそのロボを視て原因を調べてみましょう」
「あぁ、分かった。ワシも同行しよう」
こうして2人は問題の監視ロボットがある現場へ向かって行った。

クラッシュ達が次に入る部屋を探していると、クラッシュが曲がり角の先に次の部屋を見つけた。
「よし、あそこに入ろう!」
そう言ってクラッシュは真っすぐそこに向かって行った。
「待って、中に誰かいないか確かめて・・・」
ココがそう言った頃には、既にクラッシュは扉を大きく開いてしまっていた。すると、その中から甲高い叫び声が響いてきた。二トラス・ブリオだ。
「ひぃっ、何ですかいった・・・・・・」
「あ・・・・・・;」
(ほら言わんこっちゃなーーーい!!)
「・・・・・・ああああああ!!あなた達はッ・・・!?」
大声を上げたブリオに対して困惑したクラッシュは、苦し紛れに脳天チョップをお見舞いした。
「ええい・・・とりゃアッ!」
(無理やり気絶させたーーー!!)
ブリオは力なく床に倒れ込んだまま動かなくなり完全に意識を失ってしまったようである。それを見てクラッシュは一安心といった様子だった。
「ふぅ・・・何とかなったね」
「もう・・・次からは勝手に行動しないでよね」
「ごめんごめん」
クラッシュが緊張感のない声でそう答えるとココは少しため息をついた。
「とりあえず、早くアテナを探そうぜ。こいつが目を覚まさないうちに」
クランチが気を取り直すようにそう言うと、クラッシュ達はブリオの研究室の捜索を開始した。すると、クラッシュが部屋の奥に何かを発見したようである。
「あ、こんなところにまた扉がある」
そう言ってクラッシュは扉に手をかけるが、そこで一瞬動きを止めた。
「・・・まさかこの奥に人はいないよね?;」
しかし、最終的には意を決してその扉を開けることにした。扉を開けて中の様子を見てみるが、そこにはベッドのような平たい台が中央にあるだけで他には特に何も見当たらなかった。
「・・・な〜んだ、何もないや」

一方その頃、コルテックス達は暴走した監視ロボットの所まで辿り着いていた。エヌ・ジンは動けなくなった監視ロボットを見るや否やスパナを取り出し、監視ロボを素早く分解していった。
後ろでコルテックスが黙ってその様子を見守る中、エヌ・ジンはそのロボのパーツをひとつひとつ凝視していく。すると、あるパーツを見た時にエヌ・ジンの手がぴたりと止まった。
監視ロボットの駆動プログラムの中枢である頭部のパーツだ。エヌ・ジンはそこに組み込まれている複雑な回路を細かく確認していった。すると、彼は突然目を見開きかなり驚いた様子だった。
そして、辛うじてコルテックスに聞こえる程度の小さな声で言葉を漏らした。
「・・・回路が違う」
「・・・何?」
「拙者はこんな回路を組んだ覚えはない・・・明らかに拙者が作った物とは違う回路になっている」
「何だと!?・・・ということは、まさか」
「このロボは、他の誰かに意図的にここにいる者達を襲うように改造されている・・・!」

次へ

戻る