パニックコメディ Funny Agony


回転撃さん作

〜Ending〜



アテナは偶然見つけたクラッシュ達を見て安堵の表情を浮かべた。それはクラッシュ達も同じだった。
「・・・アテナ!」
「クラッシュ、ココ、クランチ!」
「待っててアテナ、こんな奴さっさとやっつけて・・・」
そう言って構えるクラッシュだったが、ココが呆れた様子でそれを止める。
「お兄ちゃん、まさかあの事忘れちゃったの・・・?」
「え・・・?」
「・・・まったく、私の事忘れちゃうなんてひどいわ」
フレイからそんな言葉が発せられたかと思うと、何とその瞬間からフレイの姿がどんどん変わり始めた。驚くクラッシュに対して、ココは冷静に説明する。
「ほら、地下の部屋にいたあいつらを移動させるためにこの子を行かせたでしょ?」
変わりゆくフレイの姿を見て、クラッシュもようやく納得の表情を見せた。
「・・・アニー!」
そこにいたのは、フレイホークではなく人間の姿に化けたたぬきのアニー・ラスカだった。クラッシュ達がコルテックス城に侵入する時、動物兵団の隠れ家にいたコモド兄弟達にばれることなくその場を通過するためにアニーがフレイに化けて彼らを移動させたのである。
では、本物のフレイはどうしているのか。実は、フレイが空中散歩をしていた時、彼は崖の上にクラッシュ達がいるのを発見していた。そして、フレイはそこでクラッシュ達を倒そうとしたが返り討ちにあってしまい今現在も気絶したままなのであった。
「さぁ、アテナも取り戻した事だし早いとこ此処を出ようよ」
クラッシュがそう言うと、皆も頷いた。するとその時、突如通路の奥から怒号にも似た大声が聞こえてきた。
「見つけたぞーーー!!」
「!!!」
そこからやってきたのは、火炎放射器を持ったディンゴだった。

時を同じくしてエヌ・ジンの研究所では、エヌ・ジンが彼のメカを総動員させて研究室内をくまなく捜査させていた。エヌ・ジンはしばらく様子を見ていたが、侵入者発見の合図はなかった。
「ここには奴らはおらんようだな・・・コルテックス殿と合流するとしよう」
エヌ・ジンの研究所の警備は彼のロボットたちに任せて、彼はコルテックスの研究所の様子を見に行くことにした。

その頃、動物兵団の隠れ家ではジョーやリラ・ルー達が神妙な顔つきでテーブルを囲んでいた。いよいよ捕まえたネズミの数が開示される。
「いいか?4人一スス斉にネズミを1匹ずつテーブルに置いていく。ススそれで一番多くネズミを出シシした奴が賭け金スス総取りだ」
ジョーがそう言うと、他の者も静かにうなずく。すると、ジョーが威勢よく声を上げた。
「ススそれじゃいくぜェ、イーーーチッ!」
4人が一斉にネズミをテーブルに置く。次いで2、3、とジョーが数えていくが、全員がネズミを出してきた。
(リラ・ルーめ、結構出してくるじゃねぇか・・・奴は一体どれだけ持っているんだ・・・?)
リラ・ルーにとって最後の最後でエヌ・ジンの監視ロボに出くわしたのは不幸中の幸いと言えた。その監視ロボは、何匹か捕まえたネズミを所持していたからだ。リラ・ルーはそのロボからできるだけネズミを奪ってここにやってきたのだ。
「・・・14!」
まだ全員が出してくる。さすがに3人も危機感を覚えた。
(オイ、ヤバいんじゃねぇのか・・・?)
「・・・15!」
ジョー達3人がネズミをテーブルに置く。しかし、ここでリラ・ルーが口を開いた。
「・・・ワテの負けや。もうあらへん」
(よっし・・・!!!)
3人にようやく余裕の表情が滲み出た。とりわけコングはこの後の展開に期待で胸を膨らませていた。
(まず1人消えた。後はこいつらを出し抜くだけだ・・・!)
コングは最後の1匹を握りしめ、ジョーの合図を待つ。
「・・・16」
その時、テーブルには2匹のネズミが置かれた。コングとジョーのものだ。
「!!(何・・・!?)」
「モーはもう持ってないんだな?」
「ああ、持ってないんだな」
「じゃあ、後は俺とコングの一騎打ちってわけか・・・(シシシ、てめぇの腹は読めてんだよ!)」
実は、2人でネズミを数えていた時、コングのサバ読みを読んでジョーもまたネズミの数を実際より少なく申告していたのだ。
(しまった!やられたーーー!!)
「17ァ!!」
ジョーは最後のネズミをテーブルに叩きつけるように置いた。
「・・・俺の勝ちだァ」
ジョーが勝ち誇った表情でそう言った瞬間、奥の通路からこちらに負けず劣らず騒がしい音が聞こえてきた。4人がその方向を見てみると、何とそこにはクラッシュ達が走ってきていた。
「何だァ!?」
「オイお前らァ!そいつらを捕まえろぉぉおおお!!」
更に奥からディンゴの声が聞こえてきた。ジョー達は状況がよく分からないままクラッシュ達の前に立ち塞がった。
「くっ、囲まれた・・・!」
「あの女、やはりクラッシュ側だったか・・・だが、おめぇらもここまでだぜ!」

「どうする・・・?」
仲間同士で背を向け合ってディンゴ達に構えるクラッシュが訊いた。これに答えたのはココだった。
「まともに闘う必要はないわ。とにかくここから脱出する事を考えて!」
「させっかよォ!」
ディンゴが室内であるにもかかわらず容赦なく火炎弾を撃ってきた。5人は何とかそれを避けたが、立て続けにコング達が攻撃を仕掛けてくる。その間ディンゴはクラッシュ達に火炎弾を放とうとしたが、火炎放射器を向けた先にいたのはリラ・ルーだった。
「うぉっ、何してるんですか!」
「あぁ・・・すまねぇ」
「ディンゴはん、そいつはちゃいまっせ!」
「何・・・!?」
直後に頭に激痛が走った。ココが背後からかかと落としを繰り出したのだ。アニーがリラ・ルーに化けてディンゴの隙を作り、ココが不意打ちをしたというわけだ。一方でクラッシュはコモド兄弟の素早い連携攻撃に苦戦を強いられていた。
「オラオラオラァ!どうシしたァ!!」
(くっ、隙がないッ・・・)
すると、ジョーの目の前に突如扇子が飛び込んできた。視界をふさがれたジョーは動きが鈍り、その隙にクラッシュは彼にスピンアタックを喰らわせた。そのままモーにも攻撃し、一気に形勢を逆転させた。
「・・・ありがとうアテナ」
「どういたしまして」
「・・・の野郎!」
扇子がアテナの仕業であることが分かったジョーは、立ち上がって彼女に襲いかかった。しかし、直後に駆け付けたココの飛び蹴りによって彼は再び床に伏した。コングと殴り合いをしていたクランチは、これを見て叫んだ。
「今だ!行くぞ!!」
「・・・なめんなァ!!」
ここでディンゴが火炎弾を出口に向けて放った。すると、出口の前に炎の壁が立ちあがった。
「!!・・・これじゃ出られない!!」

一方、タイニーは捕まえたネズミをコルテックスに届けるべく彼の研究室を目指していた。すると、その研究室の扉の前でばったりコルテックス本人と出くわした。
「あ、コルテックス!タイニー、ネズミ捕まえた!」
「おお、そうか。じゃあ受け取っておこう」
タイニーに直接行かせてもいいのだが、そろそろ自らウカウカにネズミを渡さなければ再び説教を喰らってしまいかねない。そう考えたコルテックスは、タイニーからネズミを受け取ることにした。
しかし、この時点ではまだ誰も気づいていなかった。そのネズミが既に意識を取り戻しており、この危機を脱する機会を虎視眈々とうかがっていることに。

エヌ・ジンが廊下を歩いていると、後ろからドタドタと耳障りな音が聞こえてきた。しかもこちらに走ってきているらしくその音は徐々に大きく、鮮明なものになっていく。そこでようやくエヌ・ジンは後ろを振り返り、そして大きく目を見開いた。
そこにいたのはクラッシュ達とそれを追うディンゴ達だった。ディンゴに出口をふさがれたクラッシュ達は、逆方向の道を引き返して他の出口を探すことにしたのだ。
「・・・クラッシュ!ついに現れよったか!」
「・・・あれはエヌ・ジン!今はかまってる暇はないんだ!」
そう言ってクラッシュは勢いよくエヌ・ジンをハードルのように飛びこしていった。
「なっ・・・!?(奴ら・・・どこへ行く気だ!?)」
場所によってはこの城も大変なことになりかねない。そう感じたエヌ・ジンは、ディンゴ達に加わってクラッシュ達を追うことにした。

コルテックスの研究所に入ると、そこには案の定明らかに機嫌の悪い表情をしたウカウカがいた。気のせいか、彼からにじみ出ているオーラもいつも以上に禍々しく見える。
「・・・コルテックス!遅いわ!たかだかネズミ1匹を捉えるのにどれだけ時間をかけているのだ!?」
「も、申し訳ございません・・・ちょっと色々なハプニングが・・・」
「言い訳などよいわ!さっさとネズミを置け!」
「は、はい・・・」
言われるがままにネズミを実験台に置くと、ウカウカは装置を作動させた。不気味な色の光線がネズミに当てられる。すると、結果を映す画面にはついにコルテックスが待ち望んだ物が映っていた。
「こ、これだ・・・!これです!まさに私が必要とする新兵器の材料・・・!」
「それは本当か?」
「ええ、間違いありません」
ここ最近は何かとついていないコルテックスだったが、これは奇跡と言っていいくらいの幸運だった。コルテックスの表情もようやく晴れ渡る。しかし、ここでコルテックスにとって最後にして最大の試練が訪れる。
実験台に置いていたネズミが目を覚まし、その場を動きだしたのだ。
「何ッ・・・!?」
「何をしている。捕えろ!!」
ウカウカに喝を入れられコルテックスはようやくネズミを追った。ネズミは今のところ部屋の中を走り回っている。コルテックスもそれに合わせて必死に部屋中を駆け回った。
「ハァ、ハァ・・・ま、待てーッ!」
「ええい、この老いぼれめ!さっさと捕まえんか!」
しびれをきらしたウカウカはネズミに向けて邪悪なオーラの一部を飛ばした。が、ネズミはやはり軽快なステップでそれを避けていく。やがてネズミは研究所奥の新兵器を置いてある部屋に入っていった。
(まずいッ・・・!もし新兵器に何かあったら・・・)
不安に思いつつもコルテックスはネズミを追いかけ部屋に入る。新兵器が目の前に見えるだけあって、結果的にはコルテックスのモチベーションが上がって勢いを増してネズミを追う事が出来た。そして、ついにネズミを射程圏内におさめる。
「今だァァァアアアアア!!」
その時、ネズミは目の前にコルテックスの巨大な手が迫ってくる中で判断を迷っていた。これまで数々の動物達が受けてきた進化光線の一端を陰で受け続けてきたこのネズミの頭は冴えわたっていたが、それでもこの局面においては一瞬では判断しかねた。
だが、最終的には行動を決めなければならない。そうしなければ生き残れないのだ。そして、ネズミが最後に決めた行動は"穴の中へ逃げる"ことだった。ネズミは思い切りジャンプをして目の前に見えた穴の中へ飛び込んでいく。
「なっ・・・そこは!?」
ネズミは見事穴の中へ入りこの危機を脱した。かに思えたが、ネズミの腹が急に激しく光りだした。激しい痛みにもがき苦しむ。実は、ネズミが入りこんだのはただの穴ではなかった。コルテックスが作りだした新兵器のエネルギー補給口だ。

「これは・・・!」
新兵器が激しく震えながら起動し始める。明らかに様子がおかしい。
「これは・・・まさかッ!!」
暴走。新兵器が本来プログラムにない動きをしているのだ。考えられる原因は一つ。材料と一緒に入りこんだ不純物(ネズミ)の介入だ。その時、更なる不運がコルテックスに降りかかる。
研究室の扉が開いたかと思うと、その先にいたのは彼が今最も会いたくない人物だった。
「・・・クラッシュ」
血の気が引いた。やはり自分はついていない。
「フクロネズミだと!何故貴様がここにいる!?どういう事だコルテックス!!」
声を荒げるウカウカに勝手に動き出す新兵器。コルテックスは頭を抱えてしゃがみこみたい気分だった。
(・・・すまぬコルテックス殿、間に合わなかった・・・)
エヌ・ジンはコルテックスの表情を見て心底同情した。しかし、ここに来て突然ひらめいた。決死の表情で彼はその言葉を口にする。
「ウカウカ様、これは作戦です。敢えて隙を作って奴らをここに誘い込み、あの新兵器で奴らを葬るつもりだったのですよ!」
「・・・成程。ならばさっさと奴らを片付けろ!」
これでウカウカの怒りはとりあえず収まった。あとは新兵器の方がうまくいくかどうかだ。
「なんだなんだ・・・?何いきなり?!」
「これで終わりじゃクラッシューーーーー!!」
コルテックスは祈るような気持ちで新兵器のボタンを押す。すると、新兵器はより激しく震えだしボディ全体から眩い光を放った。
「・・・・・・!!!」
「・・・ワシらもろとも・・・な;」

エネルギーの流動が不規則になってしまった結果、その鉱石及びネズミから抽出されたエネルギーはあらぬ方向へ飛びだし、ついにコルテックスの新兵器はコルテックス城と共に崩壊した。

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