パニックコメディ パニックラッシュ!


回転撃さん作

〜Happening〜



激しい風とナットの悪戯品によって、ニーナの発明品は未だ勢い衰えることなく飛び続けていた。雷の音が激しく鳴り響く雲の中、それはどこへとなくずんずん進んでいく。
一体これはどこまで飛び続けるのだろうか。少なくとも、まだまだ地面まで落ちることはなさそうだ。

クラッシュは突如やって来たフレイホークと孤独の闘いを繰り広げていた。フレイの銃は真空を作りだし、それをいくつも飛ばしてくる。クラッシュがそれを避けると、その後ろにあった木に綺麗な穴があいてしまった。
「うっへ〜!あんなのくらったらひとたまりもないぞ」
空気銃の威力を見せつけられクラッシュも必死で真空弾を避けていく。
「ヘッ、何だよ。避けるだけで精一杯か?!世界を救った英雄様がよぉ!」
「何だとォ!?」
見事に挑発に乗せられたクラッシュはフレイに向かってまっすぐ走っていく。するとフレイは空気銃を構え直して引き金を引いた。今度はその銃口から突風が放たれた。
「うわぁっ!?」
クラッシュはその風に勢いよく吹き飛ばされ、木の幹に頭をぶつけてしまった。
「ったぁ〜・・・」
「オラどうした?こっちに来てみろよ」
「むぅ〜・・・アイツ、言わせておけば!」
クラッシュは再びフレイに向かって突進するかのような勢いで走りだす。
「アホか。何度突っ込んでも同じだ」
フレイは再び空気銃の引き金を引き、突風を放つ。しかし、クラッシュはその瞬間一気に横に跳び込んでそれを避けた。
「何ッ?」
そしてそこから素早くスライディングでフレイに攻撃する。
「どうだッ!」
スライディングで転倒してしまったフレイにさらにスピンアタックを仕掛けようとするが、フレイは突風の力によって後ろへ飛んで何とかそれを避けた。
「・・・ハッ、面白くなってきたじゃねぇか」
「まだまだぁっ!!」
クラッシュはさらに攻撃を仕掛けようとフレイに近づく。
「・・・なら、これはどうだ?!」
フレイは体を回転させながら空気銃の引き金を引き、全方向に突風を巻き起こした。クラッシュは本能的にしゃがみ込んで飛ばされるのを最小限に防ぐ。そしてすぐに地面を蹴ってフレイに思い切りスピンアタックした。
フレイは勢いよく吹き飛ばされたが、空気銃を後ろに向けて発射させ瞬時に前へ飛んだ。そのままクラッシュの頭に蹴りを入れて今度はクラッシュが飛ばされる。
たたみかけるように真空弾を発射させるが、クラッシュは空中で体をひねりギリギリでそれを避けた。そのまま竜巻スピンアタックで一気に攻める。
「ぐあっ!」
クラッシュの攻撃は見事にクリーンヒットし、フレイは大きくダメージを受け吹き飛ばされる。勢いよく地面に叩きつけられたが、何とか起き上って銃を構える。
「チィッ、だったら・・・」
その時、突如フレイの後ろからいかつい声が聞こえてきた。
「オイ、何してんだ」
振り向くと、そこにいたのはディンゴダイルだった。それに驚いたのはフレイだけではない。さすがのクラッシュでも1人でこの2人を相手取るのは少し厳しい。
「・・・何だよ、邪魔すんじゃねぇよ」
「今のオレっち達の目的はコイツじゃねぇだろ。もう任務はこなしたんだ。帰るぞ」
「・・・ちぇっ」
フレイは空気銃を構えると、クラッシュはいぶかしげな態度を見せたがどうやらクラッシュへの攻撃ではないようだ。フレイがその場でジャンプすると、ディンゴは彼の足をしっかりと掴み空気銃の力で瞬く間に空の彼方に飛んでいった。
取り残されたクラッシュは茫然と青空を見つめたまましばらく突っ立っていた。

フレイは空気銃から絶えず突風を巻き起こしてコルテックス城を目指し飛んでいた。ディンゴと火炎放射器の重さを抱えながら飛び続けるにはさすがにこれぐらいしなくてはならない。
先程のクラッシュとの対決で疲弊したせいか、フレイはボーっとしながら空を飛んでいた。前方から何かが飛んできている事にも気付かずに。幸いその何かはフレイには向かってこなかったが、代わりに被害にあったのはディンゴの方だった。
「いてっ!」
予想以上に勢いよく飛んできていたので、肩にぶつかった拍子に背負っていた火炎放射器が肩から滑り落ちてしまったのだ。
「あーっ!!」
ディンゴは慌てて掴もうとするが、重力に従って落ちていく火炎放射器の速度は遥かにそれを凌駕していた。
「オイ!オレっち自慢の火炎放射器が落ちたぞ!どこ見て飛んでんだてめぇ!」
「あ!?お荷物にんなこと言われたかねぇよ。むしろその方が楽でいいわ!」
「誰がお荷物だオレっちがブツ取って来たんだぞコノヤロー!お前もオレっちの得物くらい取ってこいや!」
「やだね。お前が取りに行って来いよ」
「こっから落ちろってのか!?」
2人は道中こんな口喧嘩を繰り広げながら空を飛んでいった。一方のぶつかってきた物体はというと、実はこれはニーナの発明品なのであった。
ワルワルスクールからはるばるこの島まで飛ばされてきた発明品は、ディンゴとぶつかった事によってようやく下降を始め無人島の森の中へと落ちていくのであった。

クリムゾンは鉱石採掘場に着くと、その有様に驚愕した。何と採掘場が何者かによって荒らされた形跡がそこかしこに残っていたのだ。
「これは・・・どういうことだ」
何者かが掘った跡に近寄り、被害を確認してみる。見ると、いくつかの鉱石が既に採られてしまっていた。あの鉱石1つから一体どれほどのエネルギーが得られる事か。
それを考えると、クリムゾンの計画していた大量生産の量はだいぶ削られてしまったことになる。いや、本当に問題なのはそこではない。クリムゾンがいるこの場所は無人島のはずである。
それなのに採掘場を荒らされたという事は、誰かがこの島にやって来ている事を意味している。それはクリムゾンにとってはかなり厄介な事実だった。彼の計画はこの島に人がいると一気にやりづらくなるのだ。
万が一にもこの計画に致命的な邪魔が入るような事があれば、下手をすれば自分の命すら危なくなってくる可能性がある。さらに採掘場を調べていると、クリムゾンの目の前に意外なものが飛び込んできた。
扇子だ。どこからか吹いてきた風に煽られてここまで飛んできたようである。クリムゾンはゆっくりと目の前に落ちてきた扇子を拾い上げた。
「やはりどこかに人がいるようだな。計画の邪魔をされる前に潰しておくべきか・・・」
そう呟くと、クリムゾンは扇子が飛んできた方を向いて歩きだした。

その頃、黄金リンゴを目指して進むアーネスト達は滝の流れる水辺の近くで休息を取っていた。
「ふぅ〜、さすがに大自然の中の水はうまいですね〜」
ぷうはそう言って勢いよく川の水を飲んでいる。
「うん、本当だね」
アーネストもぷうに続いて川の水をついばむように飲み込んだ。するとその時、突如目の前に物凄い勢いで何かが落ちてきた。かなり高い場所から落ちてきたらしく、それが川に落ちた瞬間激しく水しぶきが上がった。
「うわぁぁぁあああ!?」
アーネストは全身に水しぶきを喰らい、ぷうは驚きのあまり足を滑らせ川の中に落ちてしまった。
「あらー・・・大丈夫?」
「えーと・・・これはアニーの悪戯ではないよね?」
「まさか。さすがにこんな事するわけないでしょ」
改めて川に落ちてきた物がなんなのかを確かめる。見ると、ほとんどの部分が金属でできた見慣れない機械のようだった。大自然あふれる無人島のはずのこの場所に一体何故こんなものが落ちてきたのだろうか。
アーネストとアニーはそれが落ちてきた空を見上げてみたが、上空にはただ点々と雲が浮かんでいるだけだった。
「・・・何でこんな所に落ちてきたんだろ?」
「うーん、もしかしたら僕ら以外にも黄金リンゴを取りに来てる人がいるのかもしれないね。その人が落としたのかも・・・」
アーネストはそう言うが、そうだとしてもこれは一体何に使う物なのだろうか。何にも分類のしようがない形をした機械だけに用途の想像が全くつかない。それに何よりも、落ち方がかなり不可解だ。
一体どういう経緯を経ればこの機械があんな所から落ちてくるのだろうか。2人はそんなことを考えていたが、しばらくしてある重大な事にアニーが気がついた。
「・・・そういえば、ぷうは?」
「・・・・・・あ;」
言われてみれば、ぷうが川に落ちてから彼の姿を見ていない。
「もしかして川に流されたとか・・・」
アニーは真顔でそう言ったが、それはアーネストには考え難い事だった。
「いやまさか!だってこの川緩やかだし足着くよ!?」
しかし、そのまさかだった。ぷうは手足をバタバタと動かしながらゆっくりと流されていた。
「た、助けてえぇぇ!」

クラッシュはようやく我に返ると、しばらく忘れていた黄金リンゴという目的を思い出した。
「ハッ、そうだ。黄金リンゴ!」
あっという間に元気を取り戻したクラッシュは、再び前に進みだした。すると、奥から木々の隙間を縫うようにして人影が見えてきた。もしかしたらココ達かもしれない。
クラッシュはそんな期待を胸にさらに足を速めた。しかし、彼の前に姿を現したのはココ達ではなかった。
「・・・誰?」
見た目は30代後半の男性といったところだろうか。だが、目が隠れて見えないほど前髪が伸びていたので本当のところは定かではない。その男は落ち着き払った様子で口を開いた。
「お前はクラッシュ・バンディクーか。何故こんな所に1人でいる?」
「それが道に迷っちゃって・・・って、アンタは誰って聞いてるんだけど!?」
「俺はリドル。そうか、お前が黄金リンゴを狙っているんだな」
「そうだけど・・・何でそんな事を知ってるの?」
「俺は色々知ってるのさ。お前の知りたい事だってな」
「え、何?」
「まずはお前の仲間の居場所と、それから黄金リンゴの事についてだ。知りたいか?」
「本当に!?うん、知りたい!」
クラッシュは元気よく答えると、リドルは自分が歩いてきた方向を指差した。
「お前の仲間とは、この先へひたすらまっすぐ進んでいればいずれ会えるだろう」
それは予言めいた言葉だった。すると、今度はリドルの指がさっきとは正反対の方を指した。
「そして黄金リンゴは、こっちだ。ただし、早く行かないとまずいかもしれない」
「・・・どういうこと?」
「・・・これはお前に説明しても分からないだろうな。とにかく、この島にいるうちは気をつけておいた方が身のためだ」
「ふーん・・・まぁいいや。教えてくれてありがとう」
クラッシュはそう言うと、再び歩き出した。
「・・・ほぅ、そっちへ行くのか」
リドルはすれ違いざまに微笑を浮かべながらそう言った。クラッシュは黄金リンゴの場所とは正反対の、つまりはココ達がいる方へ歩いていたのだ。
「うん、早くココ達に会って黄金リンゴのある場所を教えてあげなきゃ」
「そうか・・・せいぜい頑張れよ」
リドルはそう言ってクラッシュから離れていった。そして、微笑を浮かべながら小声でさらに続けた。
「そっちの方も急がないとまずいかもしれないからな」

一方、巨大な倒木の中を歩いていたクランチとアクアクは幹の外へ出る場所を模索していた。
「・・・この辺がいいんじゃねぇか?」
「うむ、そうじゃな。打ち込んでみるがよい」
「おう」
そう言ってクランチは体勢を整える。実はクランチ達はこのやりとりを何回も繰り返していた。この辺りは倒木が複雑に入り組んだ状態で倒れており、どこを突き破ってもまた新たな倒木がクランチの行く手を阻んでいるのであった。
それでもめげすにクランチは本日30回目の鉄腕パンチを繰り出した。すると、木の幹はメキメキと勢いよく割れていき瞬く間に視界が開けていった。しかし、あまりに力が入りすぎたのか、それともその部分の木が弱かったのか
クランチの立っている所までひびが入ってきた。
「おッ!?」
そしてついにその地面が崩れ、クランチは割れた地面の下へ落ちていってしまった。
「クランチ!」
アクアクはクランチを追って穴の中へ入っていくと、その下は建物内の通路のような場所になっていた。鉛色の壁が前後に延々と続いている。
「ってて・・・やりすぎたか」
「クランチ、何だここは・・・」
アクアクは周りを見渡していぶかしげな表情をしながらクランチに言った。
「さぁ、俺が知るかよ」
「ここは無人島のはずじゃ・・・なのに何故こんな通路がある?」

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