パニックコメディ パニックラッシュ!


回転撃さん作

〜Happening〜



クラッシュ達がいるこの島にまた新たな客人がやって来たようだ。ワルワルスクールからニーナの発明品を探しにやって来たナット・プランクとシド・ブランダーである。
2人は砂浜に足を踏み入れると、奥の森を見つめてナットが言った。
「・・・まさかこんな所まで飛ばされてないだろうな」
「でも、飛んでった方向にはこの島ぐらいしかなかったからね・・・」
「どうする?ドボンと海の底に落ちてたら・・・」
「・・・・・・;」
「ハァ、是が非でも見つけなきゃマジで何されるかわかんねぇ。とりあえずこの島全体を探るぞ」
「うん」
そう言うと2人は憂鬱そうに森の中へと歩き出した。

その頃、謎の通路に落ちてしまったクランチ達は、その正体を探るためひたすら奥へと続く通路を歩いていた。これまで彼らは、てっきりここを無人島だと思い込んでいた。
しかし、ここにきてどうもそうではない可能性が出てきてしまったのだ。それも原住民のような原始的な技術ではない。むしろ先進的な構造をしているようにも思える。
一体こんな場所に誰がこの通路を作ったのだろう。そんなことを考えながらクランチ達はひたすら通路を歩いていく。
「・・・これは元々ここに住んでた人間が作ったって感じじゃねぇな」
クランチが周りを見回しながら言った。アクアクも同意してさらに続ける。
「うむ、どちらかといえばコルテックスのように島にやって来たものが作ったもののようじゃな」
「なぁアクアク、この通路は何のために作られたと思う?」
「うーむ・・・詳しい事は分からんが、わざわざ地上ではなく地下に作っているあたり何か怪しいものを感じるな」
「やっぱりか・・・とりあえず、この先に何があるのかくらいは調べた方がよさそうだな」
そう言ってクランチ達は徐々に歩みを速めていった。

一方、ココ達はアテナの扇子取りに行くため飛ばされた方向に向かってまっすぐ進んでいた。すると、奥から人影がやってきているのが見えた。もしかしたらはぐれた仲間かもしれない。
ココ達はそんな期待を胸にさらに足を速めた。しかし、彼女達の前に姿を現したのはその仲間ではなかった。長身で若干細身の体型だ。ココ達の仲間でこの体型に該当する者はいない。
(・・・誰だろう?)
見た目は20代前半の男性といったところだろうか。鋭い真紅の瞳をぎらつかせ、どこか怪しげな雰囲気を醸し出している。その男は落ち着き払った様子で口を開いた。
「お前ら、何故こんな所にやって来た?」
「・・・そう言うあなたは?」
アテナがいぶかしげに訊き返すと、意外にも彼はその問いに答えてくれた。
「俺か?俺は・・・科学者だ」
確かに白衣を着ておりそれらしい恰好をしているが、こんな無人島に科学者が何の用で来ているのだろうか。黄金リンゴを探しに来ている自分たちよりもそっちの方が余程気になる。
「俺の質問にも答えてもらおうか。お前達はここに何をしに来た」
「私達は黄金リンゴを取りに来ただけよ」
ココがそう言うと、彼は一瞬顔をしかめたような気がした。
「・・・黄金リンゴだと?」
ココの答えを聞いたクリムゾンは、記憶の糸をたぐり寄せ思考をめぐらせる。
(そういえば、ここにはそんなものがあると聞いた事があるな・・・こいつらがそれを探しに来たというのなら他にも同じ目的でここに来ている奴がいる可能性が高い・・・)
「・・・そうか、分かった。なら・・・死んでいけ!!」
クリムゾンは突如真紅の瞳を見開いてそう叫んだ。

ナットとシドは森の中をあてもなく歩き回っていた。するとその時、シドが何かに気がついたようだ。
「ん?何か聞こえてこない?」
「あ?」
言われてナットも耳を澄ませてみると、確かに聞こえてきた。誰かの叫び声のような音だった。向かうあてもなかった2人は顔を見合わせると、その音のする方へ行ってみることにした。
歩いて間もなく川の流れる音が聞こえてきた。さらに歩いていき川辺に出ると、その音の正体を発見した。
「た、助けてえぇぇ!」
叫び声を発していたのは川に流されているぷうだった。相当なカナヅチらしく必死に手足をバタバタと動かしているが緩やかな川の流れにも全く歯が立っていなかった。
「大変だ!」
「・・・そうか?」
シドは慌ててぷうを助けようと川に飛び込む。しかし、川に飛び込んだ途端シドはぷうと同じように手足をバタバタと動かし始めた。実はシドもカナヅチなのであった。2人は一緒に緩やかな川に流されていく。
「オイイイイ!!何手間増やしてんだよお前!・・・ったく、しょうがねぇなぁ」
仕方なくナットも2人を助けるべく川に入る。と、ここでナットがある事に気がつく。
「つーかこの川足着くじゃねーかよ!どうやって溺れてんのお前ら!?」
結局ナットが2人を川辺までひきずる形で救出することに成功した。
「いやぁ、死ぬかと思った・・・どうもありがとうございます」
そんなぷうの言葉をよそにナットは疑問に思った事をそのまま口にした。
「ってかお前は何でこんな所に来てるんだ?」
「この島には黄金リンゴっていう伝説の食材がある場所なんだそうです。僕はそれを探しに来ていて・・・そう言うあなた達は?」
「あぁ、まぁ俺達も探し物だ。リンゴではないけどな」
「そうだ。君はこの辺で何か機械っぽい物見なかった?」
シドがぷうにそう訊ねたが、案の定彼はキョトンとした表情になった。
「へ?何でこんな所に機械なんかがあるんです?」
「そうかぁ、そうだよなぁ〜・・・」
ナットは心底困った表情で頭をかきむしった。
「まぁまぁ、とりあえずもう少しこの島で探してみようよ」
すると、川の上流の方からまた誰かの声が聞こえてきた。今度ははつらつとした少女の声だ。
「あ、ぷうがいたよーッ!」
そう叫びながら川に沿って走って来たのはアニーだった。アーネストも後ろからやって来ているようだ。それを見てぷうの表情も晴れ渡った。
「この人達に助けてもらったんです」
ぷうはそう言ってナット達を見た。
「それはどうもありがとう」
アーネストがお礼を言うなか、アニーはぷうの脅威のドジ加減に驚嘆していた。
「というかまさか本当に流されてたとはね・・・」
「だって・・・あんまりびっくりしたもんだから・・・」
「まぁ確かにアレには驚いたよね」
どうやらぷう達の方も何か予期せぬ出来事があったようだ。彼らの会話を聞いていたナットはそんな事を思ったが、具体的に彼らの身に何が起こったのかを聞くほどの興味は湧かなかった。
「シド、もう行こうぜ」
「あ、うん」
こうして2人はぷう達のもとから過ぎ去っていってしまった。

クリムゾンは懐から金属製の短い棒を取り出した。そして彼がその棒を軽く振ると、何とその棒の先から彼の瞳のような紅い光が一気に伸びてきた。レーザーソードだ。
クリムゾンはそれを構え、いきなりココ達に襲いかかった。
「えぇッ!?」
困惑するココ達をよそにクリムゾンは容赦なくココに斬りかかる。しかし、ココは何とかその攻撃を避ける事ができた。
「ちょっ、一体どういうこと!?」
確かに怪しい所は多々あったが、それにしても突飛すぎる。ただ、今はあれこれ考えている暇はないらしく本当に容赦なくレーザーソードを振り回してくる。
「ヒャハハハハ!!!・・・・・・殺してやるぜェ!!!」
(コイツ・・・本格的に狂ってるーッ!?)
その時、クリムゾンの手元からレーザーソードが弾かれた。アテナが小石をクリムゾンの手元に投げたのである。その隙にココがクリムゾンに鋭い蹴りを入れて即座に距離をとる。
「くっ・・・やってくれるじゃねぇか!」
クリムゾンはすぐにレーザーソードの柄を掴み、再び発動させる。そして、今度はアテナに襲いかかる。アテナはそれを避けようとするが、クリムゾンはそれを読んで突然動きを変えてきた。
「なっ・・・!?」
「ぐふぉっ!!」
しかしてクリムゾンは、アテナに攻撃する直前で横からココの飛び蹴りを喰らい1m程吹っ飛んでしまった。
「私が相手よ!」
「仲がいいじゃねぇか。そういう奴らはまとめて殺るのが一番だ」
そう言って、素早くココに斬りかかる。ココはそれを避けたが、その直後にクリムゾンは振り返ってアテナを狙う。
「!!」
ココは急いでクリムゾンに蹴りを入れようとするが、クリムゾンは左手で何やら薬の入ったフラスコをどこからともなく取り出してココに投げつけた。ココは身体にぶつかる寸前で何とかそれを避けたが、それが地面に落ちると何とそこから爆発が起きた。
クリムゾンが投げたのは、彼特製の爆薬だったのだ。ココは爆発で吹き飛ばされてしまい、アテナはレーザーソードを避けようとしたが少し肩をかすめてしまった。
「ぐぅッ!」
「!アテナッ・・・!!」
体勢を崩したアテナは何とかクリムゾンの攻撃を回避しようと、思い切ってクリムゾンの懐に体当たりをしてみた。クリムゾンはそれを予期していなかったのか見事にクリーンヒットし、逆に彼の方が体勢を崩した。
それを見たココはすかさずクリムゾンに背後から飛び蹴りをくらわせた。
「ぐはぁっ・・・!」
この一撃もクリーンヒットし、クリムゾンはかなりのダメージを喰らった様子だった。地面に伏した彼は額を抑えながらゆっくりと起き上がる。しかし、口元を見ると何故か笑っている。
「クハッ・・・!クハハハハハハ!!ハーハッハッハッハッハ!!!」
「何なの・・・アイツ」
追い詰められているはずの彼が激しく笑い声を上げる様子はかなり気味が悪く、ココ達は背筋が凍っていくような感覚さえした。
「まさか俺がここまで追い詰められるとはなァ・・・仕方ねぇ、こうなったら奥の手だ!」
そう叫ぶと、何とクリムゾンはレーザーソードで自分の左腕を一気に斬り落とした。それも、不気味な笑みを浮かべながらだ。
「!!一体何して・・・!?」
ココ達は驚きのあまり体を動かす事ができなかった。一方のクリムゾンは相変わらず不気味な笑みを絶やさずに懐から何やら機械めいた物体を取り出し、それを斬り落とした左腕に埋め込んだ。
すると、その機械は瞬く間に展開していき大きな鉤爪がついた武器へと変化した。
「えっ・・・!?」
「自分の腕を斬り落として武器にしたっ・・・!?」
言葉でそうは言いつつも、ココはまだ目の前で何が起こったのかよく理解できなかった。彼のすることは滅茶苦茶だ。まさに狂科学者である。鉤爪の左手はアテナに襲いかかり、右手のレーザーソードはココに斬りかかる。
(!やばいッ・・・!!)
「キャァッ!」
アテナは鋼鉄の爪に薙ぎ払われてしまった。それに気を取られたココもレーザーソードを避け切れず脇腹をかすめる。
「ぐっ・・・アテナ・・・」
アテナに近づこうとするココの目の前に今度は爆薬の入ったフラスコが飛び込んできた。不意の出来事にココは対応できずフラスコが体にぶつかる。そして、爆発によって2人の距離はますます離されてしまった。
「フッ、ホラホラどうしたァ!?動きが鈍くなってるぜェ!!?」
そしてクリムゾンはアテナの方へ歩み寄り、鋼鉄と化した左腕でアテナを思い切り鷲掴みにした。
「ぐあああぁぁぁ・・・」
「アテナッ!!」
ココはアテナを助けようと起き上ろうとするが、爆発のダメージを受けているせいかうまく体を動かす事ができない。クリムゾンは左手の握力を徐々に強くしていき、アテナは悲痛な叫び声を上げる。
「やめて・・・」
ココは最早力なくそう言う事しかできなかった。
「フハハッ、万事休すってなァ・・・」
アテナが苦しめられている姿を見ている事しかできないココは悔しさで胸が一杯になった。自然と涙がこぼれてくる。
「やめてーーーーーーーーー!!!」
「ヒャーハッハッハッハッハ!!!」
クリムゾンはそれをあざ笑うかのようにさらに左腕の力を強めていく。異なる3人の叫び声が混じり合った時、その音は狼煙のような効果を発揮することとなったらしい。
クリムゾンが狂った笑い声を上げる中、突如木々の奥から何かの物影が彼に向かって飛び込んできた。それは目にも止まらぬ速さでクリムゾンの頭部に強力なキックをかまし、クリムゾンを勢いよく吹き飛ばした。
その拍子に彼の左腕の力は緩み、アテナはようやくその圧力から解放された。
「!!?」
木々の奥からやってきたのは、クラッシュだ。
「・・・お兄ちゃん」

次へ

戻る