パニックコメディ パニックラッシュ!


回転撃さん作

〜Happening〜



リドルが言っていた通り、指された方向をまっすぐ進んでいると、確かにそこにはココとアテナがいた。だが、その状況はどうも安心できるものではなかった。アテナがクリムゾンに鷲掴みにされていたのだ。
クラッシュはその様子を見るやいなや即座にクリムゾンに飛び蹴りをかましてアテナを助けた。
「オイラのアテナに何してるんだ!」
「・・・お兄ちゃん(どさくさに紛れて何言ってんの・・・)」
するとクリムゾンは起き上り、クラッシュを睨みつけらながら言った。
「やはり仲間がいたか・・・お前も殺してやる」
「こいつは一体何なの?」
クラッシュはココに聞くが、ココは首を横に振りながら静かに言った。
「私達もよく分からないわ。いきなりアイツが襲ってきたの」
「ふーん・・・って言ってるそばから来てるーッ!?」
クラッシュはクリムゾンのレーザーソードを間一髪で避ける。負けじとクラッシュもスピンアタックをかまそうとするが、鋼鉄の左手によってガードされた。
「・・・いったぁ〜」
むしろその攻撃によってダメージを受けたのはクラッシュの方のようだ。クラッシュは鋼鉄の腕に思い切り当ててしまった手に息を吹きかけ必死に痛みをこらえている。
「ハッ、んなことしてる暇はねぇぜ!」
クリムゾンはすかさず左手の爪でクラッシュを攻撃する。しかしクラッシュも瞬時にジャンプしてそれを避け、クリムゾンの機械の左腕の上に跳び乗った。
「何ッ!?」
クラッシュはそのままクリムゾンを蹴り飛ばす。
「チッ、だったら・・・」
吹き飛ばされるさなか、クリムゾンの左腕の代わりを果たしていた機械の形状が再び瞬時に変わった。今度はレーザー砲だ。巨大な銃口からは、やはり鮮やかな紅い光線が飛び出してきた。
「!?」
クラッシュはその予想外の攻撃に避けることができず、彼も光線弾によって吹き飛ばされてしまった。
「奴の機械は可変式なんだわ・・・まだ他にも何かあるかもしれない。気をつけてお兄ちゃん!」
「分かった」
クラッシュは立ち上がりながらそう言うと、クリムゾンの方へ一直線に走っていった。それに対しクリムゾンはレーザー砲を数発放つが、クラッシュは機敏な動きでこれを避ける。
あっという間に近づくと、クリムゾンは左手の機械を盾状に変えてクラッシュの攻撃をガードした。
「うっ・・・!」
またしても強烈な痛みを受けたクラッシュだが、どうにか堪える。その直後クリムゾンのレーザーソードがクラッシュに振りかかる。クラッシュがそれを避けようとした瞬間、彼は上からもう1つの危機が迫って来ている事に気づいた。
「・・・うげっ!」
まずはクリムゾンのレーザーソードを避ける。しかし、この時点でもう1つの脅威はかなり近くまで迫って来ていた。と、ここでクリムゾンもようやくそのことに気がついたようで彼は頭上を素早く見上げた。
「・・・何ッ!?」
そこにあったのは非常に巨大な木の幹だった。その巨木は大きな音をたてながら勢いよくこちらに向かって倒れてくる。クラッシュとクリムゾンは同時に後ろに跳んで間一髪その巨木を避けた。
巨木が地面に着いた瞬間、地面からは大量の砂ぼこりが立ち上り激しい震動が伝わってくる。それと同時に森中に轟音が鳴り響いた。
「今のうちに逃げよう」
「うん」
こうしてクラッシュ達は何とかクリムゾンから逃げることに成功した。

ところで、何故突然巨大な木が倒れたりしたのだろうか。時をさかのぼる事数十分前、ぷう達のもとを去ったナット達はニーナの発明品を探して森の中をさまよっていた。
しかし、木々や草などが生い茂る景色の中にニーナの発明品を見つけようというのはどうしても無理があるように思ってしまう。
「・・・本当にこんな所にあるのかな〜?」
「そんなこと言ったって探せるところと言ったらこの島くらいしかないだろーが」
ナットがそう言った直後、シドはナットを見ながら歩いていたせいか前方に大木がある事に気付かずに思い切り頭をぶつけてしまった。
「いたっ・・・」
シドはあっけなく地面に倒れ込む。
「何やってんだよお前・・・」
ナットは呆れながらそう言って、それからその巨木を見上げた。
「しっかしでけぇな〜この木・・・」
「うわっ、本当だ。僕は何で今まで気づいてなかったんだ・・・」
「ホントだよまったく・・・それにしてもこの木の奥は崖になってんだな」
巨木があまりにも大きくてよく見えないが、確かによく見てみると奥には地層がむき出しになった崖がそり立っていた。
「・・・この木を登ればあの崖の上まで行けそうだな」
ナットは少年らしい笑顔でそう言い出した。どうやらここへきて木登りがしたくなったらしい。
「の、登るの?これを・・・!?」
「そうだな・・・この辺の凹凸から攻めてみるか」
「人の話聞いてるー?!」
そう言っている間にもナットは木の幹の凹凸を利用してどんどん上に登っていく。シドも慌てて後を追って木の表面に手をかける。
「ま、待ってよ!」
シドはゆっくりと木を登っていくが、その頃にはナットは既に最初の木の枝の所まで到達していた。
「ヘッへへ、お〜い!行けそうだぞ」
「ちょっと待てって言ってん・・・」
シドがそう言いながらくぼんだ木の表面に手をかけようとしたその時、手をかけることを意識しすぎていたのか足をすべらせてしまった。
「だッ・・・」
「!!」
体勢を崩したシドは地面に向かって落ちていく。
「シド!」
ナットはとっさにポケットから紐のような物をシドに向かって勢いよく伸ばした。すると、その紐は瞬く間にシドまで追いつき彼の体に巻きついた。シドは地面すれすれの高さまで下がったかと思うと、たちまちナットのいる高さまで飛び上がっていた。
その勢いは逆バンジーを思わせる程で、ナットのもとまで辿り着いた頃にはシドはすっかり元気をなくしていた。
「・・・ふぅ、これを持ってきといてよかったぜ」
「・・・・・・何だよコレ」
「名付けて人間ヨーヨーだ。楽しかったろ?」
「ナットだけだよ・・・」
そしてナットはシドに巻きついた紐を解いてやった。が、油断していたシドはその直後に再び足をすべらせてしまった。
「えっ・・・?;」
「なっ・・・?!」
焦りだしたシドはとっさに木の枝に掴まろうと手を伸ばすが、シドが掴んだのはナットの足だった。ナットもバランスを崩して木の枝から滑り落ちる。
「お前何やってんだあああ!!」
その時、ナットのポケットから何かが飛び出てきた。彼の悪戯発明品である。
(うげっ、まずいッ・・・!!)
金属でできた球状の発明品はシドを追い越して真っ先に地面に落ちていく。すると、それが地面に着いた瞬間そこから凄まじい爆発が起きた。
「ええええええええ!!?」
さらにその爆発によって、巨大な木の幹の一部が轟音をたてて崩れ始めた。根本に限りなく近い部分の幹がなくなってしまうと、その巨木はダイナミックに倒れ始めたのだ。
そんな中、ナット達は爆発後に広がった煙の中へと落ちてくのであった。

ナット達が起こした事故がおよぼした影響は、クラッシュ達に対してだけではなかった。巨大な木が地面に倒れ込んだその瞬間、地下の通路を探索していたクランチ達は激しい震動を感じていたのだ。
クランチでも体勢を崩してしまう程の揺れだ。
「何だ・・・地震か!?」
「しかしこの轟音・・・上の方から聞こえるぞ!」
「いずれにしてもただ事じゃねぇな、こりゃ・・・」
振動が始まってからどれくらいたったかはよく分からないが、かなり長い時間揺れ続けていたのは確かだ。ようやくその揺れが収まると、クランチは再び立ち上がった。
「ふぅ・・・やっと収まったか」
「今の揺れは一体何だったんじゃ・・・」
「上で何かがあったのか・・・クラッシュ達、無事だといいんだが・・・」
すると、アクアクがようやく何かを発見したようだ。
「クランチ、向こうに扉があるぞ」
「本当だ。入ってみるか・・・」
クランチはそこの扉を開けて、中の様子を見た。先程の揺れのせいでかなり散らかっている。何があるかと言えば、割れたガラスの破片や見慣れない形に加工された金属が中心だった。
「・・・なんだこいつは?」
クランチはその金属を不審に思い近づいて見てみた。すると、その金属がわずかながら光を発しているのが分かった。その周りをよく見てみると、フラスコの中に入っていた物なのか緑色の怪しげな液体が地面に広がっていた。
その液体が金属に触れると、その金属の光はますます強くなっていった。
「何ッ・・・!?」

一方、アーネスト達は小高い丘に辿り着いていた。そこから島を一望しようという考えだ。そこに登ってアーネスト達がまず見た景色は、ここからでもはっきり見えるほどの巨木が倒れていく瞬間だった。
「うわ〜〜〜〜〜・・・すごい」
アニーが声をあげてその様子に見入っていた。
「あんな大木が倒れるなんて・・・一体何があったんだろう?」
遠くからでも迫力満点のその光景を茫然と眺めていると、しばらくしてこの島にまた異変が起き始めている事に気付いた。ある場所の地面から緑色の怪しい光が急に湧きだすように発生したのだ。
「・・・何だアレ?!」
そこからはドオオオオオン、という爆音が響いてきたことから、どうやらあの場所で爆発が起こったらしい。
「爆発!?なんでこんな無人島で・・・?!」
立て続けに信じがたい光景を目撃し、アーネストも驚きを隠せない。
「大丈夫でしょうかね、クラッシュさん達・・・」
ぷうが少し不安そうな表情をしてそう言った。
「・・・きっと、大丈夫よ。クラッシュ達なら」
アニーが慰めるようにそう言うと、アーネストもうなずいた。
「うん、そうだね。でも、あんな爆発が自然に起きるなんて事はさすがにないだろうし・・・もしかしたらアレはクラッシュ達が起こしたのかも」
「成程!じゃああそこに行けば・・・」
「クラッシュ達に会えるかも」
こうして、アーネスト達の目指す場所は決まった。

その頃、クラッシュ達はある程度その場から離れると茂みの上に腰をおろした。
「さっきは助けてくれてありがとう、クラッシュ」
アテナがクラッシュを見てそう言うと、クラッシュは少し照れくさそうにはにかんで見せた。
「えっへへ、いいっていいって!」
「それとあの時の台詞のことだけど、一応念のためごめんなさい」
「・・・ガ〜〜〜〜〜ン!」
クラッシュは腰を下ろした状態からさらに勢いよく地面に倒れ込んだ。それを見たココも思わず笑いだしてしまった。
「ま、何はともあれお兄ちゃんとは会えたんだし早いとこクランチ達とも合流しなくっちゃね」
「・・・そういえば、クランチ達がいないや」
「まぁ、色々あってね・・・はぐれちゃったの」
「そうなんだ・・・」
クラッシュはそう言うと、突然何かを思い出したかのようにバッと体を起こした。
「あ、そうだ!」
「な、何・・・?」
「オイラ、黄金リンゴのある場所が分かったんだ!」
「え、本当に・・・!?どこにあるの?」
「えっとね・・・えっと・・・」
クラッシュはその方向を指差そうとしているようだが、急に周りをキョロキョロと見回し始めて見る見るうちに不安そうな顔つきになっていった。
「・・・どうしたの?」
「・・・・・・オイラって、どこから歩いてきたんだっけ?」
今度はココ達が地面に倒れ込んでしまった。

クラッシュ達を取り逃したクリムゾンは、ひとまず自身の研究所に戻って体勢を整えることにした。研究室の扉を開けると、先程の倒木の影響で内部はかなり散らかっていた。
「チッ、急がねばまた足元をすくわれかねないな・・・」
そうつぶやくと目の前のガラスの奥に浮かぶ自分の体の一部を見つめた。
「仕方ない。こうなったら全て付けるしかないな」
するとクリムゾンはどこに持っていたのか袋のような物を取り出した。そこに入っていたのは何とココ達との戦いで切断した自分の左腕だった。そしてクリムゾンは埋め込んだ機械の左腕を取り外す。
すると、その機械は瞬く間に元の大きさにまで折りたたまれクリムゾンの白衣のポケットの中におさめられた。さらに、クリムゾンはガラス越しに目の前に広がる実験装置をボタンやレバーなどを使って器用に操作し始める。
「邪魔者は全て潰してやる・・・俺の全力をもってなァ・・・!」

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