クラッシュ・ウェスタン2 〜Leute beim Edelstein〜


リボルバーさん作

第三章

深夜2時のバー・クランチ。店を閉め、店内にはクランチとシクラメンの二人だけ。
シクラメンはカウンター席に座り、クランチはカウンターでグラスに酒を注いでいた。
「シクラメンちゃん、お疲れ」
「お疲れ様です」
二人はそう言って手にグラスを持ち、酒を飲み始めた。
「いやー、マジで忙しいな」
「そうですね・・・はぁ」
シクラメンは深くため息をついた。
「どうした?悩み事か?」
「気づいてもらいたいのに気づいてくれない。こんなもどかしい気持ち、初めてで・・・」
「・・・なるほどな。いいか、気づいてもらえないなら気づいてもらうまで必死にアピールするんだ。どれだけ鈍くてもいつかその気持ちに気がついてくれるはずだ。シクラメンちゃんは元々綺麗だし性格もいいからきっと気づいてくれるさ」
クランチはシクラメンの気持ちをなんとなく理解していた。恐らく彼女は誰かに恋をしてるのだろう。
「あ、ありがとうございます」
「俺には応援することしか出来ないからな。ま、がんばれや」
二人が会話をしていると、いきなり店の扉が開いた。
「おっと、もう今日は終わったぜ・・・客じゃないみたいだな。シクラメン、こっちに来い」
クランチはそう言うとシクラメンの手を引っ張った。シクラメンもクランチ側に移った。
店に入ってきたのは銃を持った大量の人間だった。全員が同じスーツを着ており、全員がクランチたちに向って銃を構えていた。
「シクラメン、今から俺の言うとおりにしろ」
「は、はい」
「俺はこいつ等の相手をする。お前は裏口から出て、クラッシュの家に行け。場所は分かるな」
「分かります、でもクランチさん一人を置いては・・・」
「俺のことはいい。クラッシュに報告すればあとはあいつの言う通りにしろ。いいな」
「で、でも・・・」
「わかったら早く行け。これは店長としての命令だ。守らなかったら即クビだ」
クランチはそう言うとカウンターの下にしまっていたSAAを取り出し、構えた。
シクラメンも頷いて急いで裏口まで行き、外へ出て行った。
「お前等の目的は知らない。でもな、この店で暴れてもらっちゃ困るんだ。お引取り願いたいな!」
クランチはそう言った瞬間、物凄いスピードでSAAを撃ち放った。次々と発射された銃弾は、見事に相手にヒットした。当たった相手は床に倒れた。
スーツを着た相手はその瞬間、銃を乱射し始めた。クランチはしゃがみこみ、リロードを行った。
「クソ、数が多すぎるぜ・・・」
クランチはそう言って、右手だけを出して、SAAを撃った。
一発撃っては銃鉄を引くの繰り返し。この人数相手では全く効果が無かった。
相手はひたすら銃を撃ち続ける。今少しでも顔を出したら即死だろう。
クランチは心の中では分かっていた。勝てるわけがないと。
ふと、銃声が鳴り止んだ。
「あんたたち!人一人殺せないのこの人数で!全く、呆れるわ」
店内に女性の声が鳴り響いた。
「そこに隠れてるのはわかってるのよ!出て来なさい!」
「安々と出ていく馬鹿がいるかって話だ!お前等、一体何者だ!?」
「安々と身分をいう馬鹿もいないでしょ!ま、名前だけはいいかしら。あたいの名はニーナ・コルテックス。残念だけど、この街のやつ等全員に未来はないわね」
「黙れ、そう簡単に行くと思うなよ!」
クランチはそう言いながらカウンターから顔を出し、ニーナの場所を確認し、SAAを撃った。
しかし、ニーナは何と左腕を伸ばし、天井にかかっていたシャンデリアを掴み、ぶら下がることにより、銃弾を回避したのだ。
「あ、危ないわね!」
クランチはその姿を見て唖然とした。
「う、腕が伸びた・・・!?」
「このくらいで驚いてちゃ、身が持たないかもね!」
ニーナはそう言ってシャンデリアを左手で掴みながら、右手をクランチに向けた。
「食らえ!ガトリング!」
ニーナがそう言った瞬間、右手が物凄い勢いで回転し、そこからクランチ目掛けて無数の銃弾が飛んでいった。
「クソッ!」
クランチは立ち上がり、横に走りながら銃弾を避ける。しかし銃弾は途切れる気配がない。
「逃げ惑え、逃げ惑うがいい!アハハハハ!」
ニーナは笑いながら撃ち続けた。しかし、銃弾が途切れてしまった。
「あらら、使いすぎちゃったみたいね」
クランチはその隙を見逃さなかった。
「食らえってんだ!」
クランチはSAAを一発撃った。しかしニーナは今度は右腕を伸ばし、違うシャンデリアに移った。
クランチは次々とシャンデリアを移っていくニーナを撃ったが、銃弾は一発もかすりもしなかった。
そして、SAAの弾がなくなったため、クランチはリロードをした。その瞬間、ニーナがシャンデリアから一気に飛び降りてきた。
「しまった!」
クランチは避けようとしたが遅かった。ニーナの鋼鉄の左手は物凄い勢いでクランチの頭に直撃。クランチは吹き飛ばされてしまった。
「グハァ!」
クランチは床に倒れこんだ。
ニーナは倒れたクランチの頭を踏みつけた。
「まぁ、一般人にしては奮闘したほうよ、あんた」
「ちくしょう・・・」
「あんたたち!火を放て!」
ニーナの叫び声とともに、部下たちは店に火をつけ始めた。木でできているこの店は、いとも簡単に燃え始めた。
「もう少ししたら、街に無能な奴等の悲鳴が木霊するでしょうね」
「な、何が目的なんだ・・・」
「しぶといわね・・・いい、こいつを運んどくのよ!」
ニーナはそう言うと店から出て行った。そして、部下たちはクランチに近づき、クランチをロープで縛ると、店から運び出した。
「な、何をする!」
クランチは何とかしようと必死にもがいたが、どうすることも出来なかった。

暗い道を、シクラメンはひたすら走り続けた。
後ろからスーツを着た男たちが追ってきていたが、気にせずひたすら走り続けた。
このままではクランチが危ない。早くクラッシュに知らせて助けてもらおう、そう考えていた。
「キャッ!」
シクラメンはつまずいてしまい、こけてしまった。シクラメンの周りに男が三人寄ってきた。
男達は手にナイフを持っていた。接近戦を挑むつもりだろう。
シクラメンは立ち上がると、ポケットから何かを取り出した。
「出来れば戦いたくはなかったけど、ここで死ぬわけにはいかない・・・!」
シクラメンはポケットから取り出した何かを右手にもち、さっと振ると、瞬時に長い槍に変化した。
「女の子だからって、甘く見ないでよね!」
シクラメンはフラワー・スピアを大きく振り回し、相手をけん制した。
男の一人がナイフを構えて突進してきた。
シクラメンはそれを左に避け、一瞬の隙を見計らい、相手の足にフラワー・スピアを突き刺した。
しかし、男は特にひるむ様子も無く、再びナイフを構えた。
「そろそろね・・・」
シクラメンが呟いた瞬間、男はいきなり力が抜けたようにその場に倒れた。
他の男二人がナイフを構えて突っ込んできたが、シクラメンはそれを華麗に避けると、二人に素早くフラワー・スピアを突き刺した。
そして、少し時間が経ち、男二人はその場にぐったりと倒れこんだ。
「あいにく人殺しは嫌いなものでして、しばらく眠っててもらいますよ」
シクラメンは先を急ごうとクラッシュの家の方向を向いた。が、前方には恐ろしい光景が広がっていた。
何とさっきとは比べ物にならない数の男達が道を塞いでいたのだ。しかも全員が銃を持っていた。
この状況で、シクラメンが勝てるわけも無かった。
「ど、どうしたら・・・」
シクラメンが迷っていたその時、何者かがシクラメンの前に下りて来た。
「ち、やっかいなことになったみたいだな」
シクラメンはその声を聞いたことがあった。
「み、南さんですね!」
「ご名答。で、行き先は?」
「クラッシュさんの家です!」
「そうか、じゃあこうした方がいいな」
南はそう言うとシクラメンのほうをむき、シクラメンを左脇に抱えるようにして持った。
「ちょ、何する気ですか!?」
「強行突破だ。俺一人の方が都合がいい」
南はそう言って右手に刀を持つと、敵の群れにシクラメンを抱えたまま突っ込んでいった。
敵は南らに向って銃を撃ってきた。
「わ、私も戦えますし、大体こんな運び方しないでください!」
「非殺傷なんかで戦えると思うな。相手が殺す気でかかってきたら、こっちも殺す気で行く。だろ?」
南はそう言って銃弾を次々と切り落としていった。シクラメンはその刀捌きを見て唖然とした。
南は一気に敵の群れとの間合いをつめ、次々と敵を切りつけていった。
切りつけられた敵は悲鳴を上げながら倒れていく。南の突っ込んだ場所は一瞬にして地獄絵図になった。
「ひ、人が・・・死んでいく・・・」
シクラメンが怯えた声で呟いた。
「他人が死ぬ様を見るのは初めてか?だったら朝まで怯えることになりそうだな」
南はそう言いながらも次々と敵を切りつけ、少しずつ道を開いていった。

「な、何の騒ぎ!?」
クラッシュが家から飛び出した。その後ろからクロックとココも出てきた。
「何が起こってるんだ・・・」
クロックは大量の銃を持った男たちを見て唖然とした。
「クロック兄ちゃん、ココを連れて北の門まで行って!おいらはみんなの救出に行くから!」
クラッシュはそう言って手にSAAを持った。
「分かった。北門に集まった人たちはボクが何とかして守るから!行こう、ココ!」
「クラッシュ兄ちゃん、無茶しないでね・・・」
ココとクロックは急いで北門に向って走り出した。
「保安官、一体どうなってやがるんだ!?」
ポトリゲスがシカゴタイプライターを構えて走ってきた。
「おいらにも分からないよ!でも、皆を助けないと!」
「だな。よし、俺様はお前のバックアップをする。背中はまかせろ」
「分かった!」
クラッシュとポトリゲスは銃を構え、逃げ遅れた住民の救助を始めた。
クラッシュは救助に専念し、ポトリゲスは敵の排除を徹底的に行った。
「俺様をなめるなってんだ!」
ポトリゲスはシカゴタイプライターを乱射した。弾丸は次々と敵に当たり、どんどん倒れていった。
しかし、敵はどんどんと増えていく。
「チッ、これじゃきりがねーな」
ポトリゲスはそう言って南方向からもやってくる敵にシカゴタイプライターを向けた。
「・・・ん?」
ポトリゲスは異変に気づいた。南方向の敵がどんどん倒れていく。
そして、こっちに向って何者かが刀を構えてやって来た。
「み、南か!?それにシクラメンも!」
ポトリゲスが叫んだ。南が敵を蹴散らしながらこっちにきたのだ。
「ポトリゲスか、状況は最悪だぞ。至るところで死人が出てやがる」
「そうか・・・よし、俺様はシクラメンを守りながら北門に行く。南はあのマヌケの世話をしてやってくれ」
ポトリゲスはそう言ってクラッシュを指差した。
「面倒な仕事押し付けやがってよ」
南はそう言ってクラッシュのところに行った。
「ポトリゲスさん、私、クラッシュさんに伝えたいことがあるので少し行って来ます」
「ああ分かった」
「では!」
シクラメンもクラッシュの元に走り寄った。
「シクラメンちゃん!南!無事だったのか!」
クラッシュがシクラメンと南のほうを見た。
「はい!でも、クランチさんが・・・」
「マスターがどうした?」
「今店で一人で戦っていて、早く助けてあげないと・・・」
「何だって!?分かった、すぐ助けに行く!シクラメンちゃんは避難して!」
「分かりました!」
シクラメンはそう言ってポトリゲスのところに行った。
「南もおいらのことはいいから避難してよ!」
「本当か?本当に行っちまうぞ」
「・・・やっぱり一緒に来て」
「そう言うと思った」
「マスター、待ってろよ!」
クラッシュと南はバー・クランチのほうへ走り出した。
しかし、いきなり近くの建物が燃え始め、道に瓦礫が崩れてきた。
「あ、危ない!」
「クソが・・・」
クラッシュと南は何とか避けることが出来た。しかし、バー・クランチへの道は完全に閉ざされてしまった。
「こ、これじゃあ助けに行けないよ・・・」
クラッシュはどうしたらいいか考えていた。
「あきらめろ、保安官」
南がクラッシュに向かって言った。
「あきらめれるわけ無いだろ!」
「マスターはもう店にはいない。どうやら向こうの手に渡ってしまったらしい」
「何で店にいないって分かるんだよ!」
「勘ってやつだ。ほら、また来やがったぞ」
また北のほうから敵がやってきた。
「保安官、俺一人で十分だからどこかに隠れていてくれ」
「いや、おいらも戦う!」
「お前邪魔だし、いない方がうれしい」
「うるさい!行くぞ!」
クラッシュはSAAを構えると一気に敵に向って突っ込んでいった。
「・・・戦い方がなってねぇなぁ・・・」
南も刀を両手に持ち、敵の群れに突っ込んでいった。
クラッシュは敵に向って銃弾を放つが、中々当たらない。
「ひ、ひぇ〜!」
クラッシュは相手の銃弾を必死に避けていた。
「何で保安官になろうと思ったんだよ・・・」
南は呟きながら敵を刀で斬り捨てていった。
南の活躍によりどんどんと敵の数は減っていった。そして、数分後には敵は壊滅状態になった。
「・・・南、すげぇ・・・」
逃げるのに必死で何もしていなかったクラッシュは、一面に散らばる敵の死体を見て唖然とした。
南は瀕死状態で倒れている敵に近づいた。そして、一瞬目を閉じ、再び目を開けた。
「・・・まずいぜ。あいつ等、北門で一気に俺たちを叩くつもりだ。早く行くぞ」
「うん!」
クラッシュと南は急いで北門に向った。

ウォーラスの宿屋は、完全に炎に包まれていた。敵が火を放ったのだ。
ウォーラスは、客室を回り、逃げ遅れた客を逃がしていた。
ロックも逃げ遅れた客の一人。扉が変形し、開かなくなってしまったようだ。
「何なんだよ一体!フェアー、下がってろ!」
ロックはフェアーを肩から下ろすと、扉に向って構えた。
「俺のパンチをなめるなってんだぁ!」
ロックは強烈な右ストレートを扉に食らわせた。扉は物凄い勢いで開いた。
「グフッ!!」
扉の外から何者かの痛そうな叫び声が聞こえた。ロックはフェアーを肩に乗せると、廊下に出た。
廊下では、扉にぶつかってしまったウォーラスが倒れていた。
「す、すまねぇ!大丈夫か!?」
「お、お客さん・・・俺のことはいいから避難してくだせぇ・・・」
「お、おう!」
ロックはそう言って急いで宿屋から出て行った。
「うぇ・・・不意打ちは痛すぎるぜ・・・」
ウォーラスはよろめきながら何とか立ち上がり、他の客室へ向った。
「大丈夫ですか!今扉を開けるんで下がっていてください!」
ウォーラスは扉に手をかけた。
「ウァチャー!これでどうだ!」
扉の向こうから声が聞こえたと同時に、扉がウォーラスに向って勢いよく開いた。
「いってー!」
ウォーラスはまた扉にぶつかり、床に倒れた。
扉の中からヘルゼルがヌンチャクを持って出てきた。
「・・・いたのか。悪かった。私なら心配しなくていいから他の方を助けてやってくれ」
ヘルゼルはそう言ってウォーラスを起こすと宿屋から出て行った。
「・・・たくよぉ、下がってろって言ったじゃねーか・・・」
ウォーラスは呟くと別の扉に手をかけた。
「お客さん!今開けますので下がっていてください!」
「そ、そっちが下がってくれ!早く!」
「え?」
「アーッ!!!引いてしまった!!!」
扉の中から声がしたと同時に、物凄い爆発が発生した。
「ギャー!!!」
ウォーラスは爆風でふっとばされてしまった。扉も木っ端微塵になり、中からリタイラルがバズーカを持って出てきた。
「マジすまない!大丈夫か!?」
リタイラルはウォーラスに近づいた。
「し、心配後無用・・・さ、早く避難して・・・」
ウォーラスはかすれた声で言った。
「分かった!じゃあ!」
リタイラルも宿屋から出て行った。
「なんなんだこの客達・・・こういうときに備えてあるのか?」
ウォーラスは何とか立ち上がり、他の客室に向った。

全客室を巡った後、ウォーラスは宿屋の外に出た。
外にはロック、ヘルゼル、リタイラルを初めとする宿泊客がいた。
「これで全員か・・・よし、皆さん北門に・・・行けそうにないな」
ウォーラスが呟き、南の方向を指差した。そこからどんどんと敵が集まってきたのだ。
「クソ!俺が相手するから、お客さんたちは北に!」
ウォーラスがそう言うと一歩前に出ようとした。しかし、それより先に三人の男が前に飛び出した。ロック、ヘルゼル、リタイラルだ。
「ここは俺にまかしとけってんだ!」
ロックはそう言うと指をポキポキと鳴らした。
「私たちに任せて、あなたは他のお客を守ってもらいたい」
ヘルゼルがヌンチャクを振り回しながら言った。
「そそ、このくらいなら僕だけでも十分だし」
リタイラルはそう言った後、両手にM1887を構えた。
「・・・お客さんに守ってもらうなんて悪いな。まかせたぞ!」
ウォーラスはそう言って他の客と一緒に北門に向った。
「おっと、僕の自己紹介がまだだったね。僕の名前はリタイラル。よろしく」
リタイラルがM1887をリロードしながら言った。
「私の名はヘルゼルだ」
「俺の名はロック!よろしくな!」
「ヘルゼルとロックか・・・で、この人数相手にどうする?」
「決まってるじゃねぇか!」
その瞬間、ロックは物凄いスピードで敵の群れに突っ込んでいった。一人に狙いをつけ、強烈な右ストレートを放った。敵の一人が物凄い勢いで吹っ飛び、それに当たった敵も次々と吹っ飛んだ。
「・・・派手なやり方なことで」
ヘルゼルもヌンチャクを持ち、敵の群れに突っ込んだ。鋼鉄で出来たヌンチャクに当たった敵は次々と倒れていく。
「近接戦闘ねえ・・・仕方ないか」
リタイラルも敵の群れに突っ込んだ。右手のM1887を撃ちながら左手のM1887を回転させ装填を行う。通常では考えられないスピードで放たれる散弾に敵はどんどんと倒れていく。
「たいしたこと無いぞこいつら!」
ロックはそう言いながら相手のナイフの攻撃をしゃがんで避けた。その瞬間、相手の手の位置まで来たフェアーが思いっきり相手の右手を噛み付いた。ナイフを落としもだえ苦しんでいる所をロックが右ストレートをヒットさせた。
「所詮数だけのようだな」
ヘルゼルはヌンチャクを敵の首に絡めた。持ち手の部分を思いっきり捻り、敵の首をへし折った。
そして、そのまま敵を持ち上げ、大きく頭上で一回転させた。死体にぶつかった敵はどんどんと吹き飛んだ。
「それにしてもどれだけいるんだ!?」
リタイラルは弾切れを起こした左手のM1887を鈍器として使い、敵を殴った後、ひるんだ所に右手の散弾で吹っ飛ばしていった。
三人の驚くべき戦闘能力により、大量にいたはずの相手も数分後には壊滅状態になった。
「いっちょあがり!やったなフェアー!」
ロックはフェアーと一緒に喜んだ。
「では、私たちも北門に」
「ふぅ〜、酒が飲みたいなぁ・・・」
三人も急いで北門に向った。

「焼肉祭りだぜひゃっはー!!!」
「ディンゴはん、はりきりすぎやって!」
「タイニー、暴れるの大好き!」
ディンゴ、リラ・ルー、タイニーは炎に包まれた中央通りで敵と戦っていた。
ディンゴが思いっきり火炎放射器をぶっ放したため、あたり一面炎の海と化していた。
「やりすぎちまったかぁ?」
「でも、何とか敵は倒したみたいやなぁ」
「タイニー、まだ戦いたい!」
三人は武器をしまうと、その場を立ち去ろうとしていた。
「そこの野獣三人組よぉ、ちょっと待てよ」
突如どこかから声が聞こえてきた。
「野獣っておれっち達の事か?」
ディンゴは声の主を探した。
「そうそう、お前たちのこと。お前等腕っ節もいいし俺達の仲間にならねぇか?」
声は上のほうから聞こえてくる。ディンゴたちは上を見た。そこには鷹の男性が空を飛んでいた。
「何やねんあんさん。敵かいな?」
「ま、そんなところ。俺の名前はフレイホーク。で、どう?こんな寂れた場所で犬死するよりかは俺達Vaterの仲間になった方がいいと思うけどな〜」
鷹の男性はゆっくりと降りてきた。
「少なくともおれっち達はこの街を捨てる気はねぇぜ。な、リラ・ルー」
「そうやで、金は無いけどそれよりもっと大切なものが此処にはあるんや。そうやろ、タイニー」
「タイニー、この街大好き!」
「そうか、じゃあ仕方ないか」
フレイはそう言うと腰からグロックを取り出し、ディンゴたちに構えた。
「おれっち達とやりあう気か?三対一だけどいいのか?」
ディンゴも火炎放射器をフレイに向けた。
「あんさん、自分が不利なことくらい分かるやろ?」
リラ・ルーもSAAを構えた。
「グォー!タイニー、もっと暴れる!!」
タイニーはSAAを構えようとしたが使い方が分からなかったのでその場に投げ捨て、素手の状態で構えた。
「強気でいれるのも今のうちだぜ?」
フレイはそう言った瞬間翼を羽ばたかせた。
「空に逃げるってか?甘いぜ!」
ディンゴが火炎放射器から火炎弾を発射した。しかし、フレイはそれを避けた。
「そんな弾速じゃ一生俺を倒せないぜ?」
フレイはそう言うと物凄い速さで空を飛び回った。
ディンゴとリラ・ルーはフレイに向って銃弾を何発も撃ち込んだが、全く当たる気配がなかった。
「ディンゴはん、こりゃ厳しいでっせ。ワイの武器じゃとても倒せませんわ」
「チ、確かに相手が悪いな・・・タイニー!何とかしてくれよ!」
タイニーは空を飛び回るフレイをひたすら追いかけていた。
「タイニー、こいつ絶対倒す!」
タイニーはジャンプし、フレイを捕まえようとするが無理だった。
「お頭がホントに弱いなこいつ等」
フレイはそう言うと空中からグロックをタイニーの足元に撃った。
「ワオ!タイニーびっくりした!」
タイニーは弾丸こそ当たらなかったものの、少しひるんでしまった。
「そこだ!」
フレイはその一瞬の隙を逃さなかった。一気に急降下すると、左手に隠し持っていたロープで一瞬にしてタイニーを縛った。
「うわ!やめろ!離せ!」
タイニーは必死にもがいたが、ロープが非常に頑丈だったため脱出することはできなかった。
「まず一人目っと!さて、後二人はどうするかな」
フレイが考える隙も無く、リラ・ルーが突進してきた。
「タイニーに何してくれてんねん!」
フレイはリラ・ルーの突進を左に避け、彼の真後ろにいるディンゴに向って物凄い勢いで近づいた。
「これでもくらえってんだ!」
ディンゴはレーザー状の火炎攻撃を出したが、フレイはそれを今度は右に避けた。
レーザーは飛んでいき、何とリラ・ルーの背中に直撃した。
「あっちー!!!!」
リラ・ルーはあまりの熱さにその場にのたうち回って苦しんだ。
「す、すまねぇ!」
「おっと、謝っている場合じゃねぇと思うんだけど」
ディンゴはフレイのいる場所を見た。フレイはまた空を飛んでいたのだ。
「降りてきやがれってんだ!」
「それは無理な話だぜ?さて、もう終わらすか」
フレイはグロックをディンゴの背中についてあるタンクに向って構えると、引き金を引いた。
「や、やっべー!!!」
ディンゴは何とかしようとしたが遅かった。銃弾はタンクに直撃し、その瞬間大爆発を起こした。
あたり一面に燃料が漏れ、それが引火し、火の海になった。
フレイはゆっくりと降下し、ディンゴのところに行った。
「Vater・・・とか言ったな・・・」
ディンゴはまだ息があったが、まともに立つこともできなかった。
「そうだけど?」
「な、何が目的なんだよ・・・」
「さぁ?ま、もう少しで教えてやるけど」
「はぁ?」
フレイはポケットから拳銃型の何かを取り出すと、ディンゴに向けた。
「お、おれっちを殺す気か・・・?」
「はずれ。少しだけじっとしとけよ」
フレイはその何かの引き金を引いた。しかし、何も起きない。
数秒何かをディンゴに向けた後、フレイはそれを向けるのをやめた。
「にしても本当に効くのかこれ?試してみるか。お前の名前は?」
「・・・ディンゴ・ダイルだ」
「職業」
「鉄加工屋を開いてる」
「ここまでは大丈夫みたいだな。じゃ、俺はお前にとってなんだ?」
「・・・仲間。Vaterという組織内の仲間だ」
「す、すげぇ効果だぜ!よし、ディンゴ。立てるか?俺と一緒に行こうぜ」
「分かったぜ、フレイ」
何とディンゴがフレイのことを仲間と思っているのだ。フレイがディンゴに向けていたのは一種の催眠装置だったらしい。
ディンゴは何とか立ち上がると、フレイの後ろについた。
フレイは倒れているリラ・ルーや縄で縛られているタイニーにも同じことをした。
二人とも催眠にかかり、フレイのことを仲間だと思うようになった。
「よし、行こうぜ、“仲間達”」
フレイはそう言うとディンゴ、リラ・ルー、タイニーを連れて北門に向かった。

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