レースクイーンの恋〜あんなヒゲ親父、大っ嫌いっ!〜
風鈴かなでさん作
第1レース 私がここにいる"理由"(わけ)
時は一週間ほど前、私はいつものようにレースクイーンの仕事をしていた。
私は、ちょっと名の売れたレースクイーン。 顔も可愛いし、スタイルだって抜群だ。
だから。 だから、ちょっとだけワガママを言ってもいいと思ったの‥‥。
でも、それが命取りとなった。
「‥‥メグミ。お前は今日からここに来なくて良い。」
そう、社長に言われた。
今までにない、すべてを失ったような気分が心でうずき出す。
「どうして? どうして私がっ‥‥。」
そう言って見ても、何が原因なのかは分かっていた。
それは、度のすぎたワガママ。
私は、自分で自分を滅ぼしたんだ──
その時だった。
私の前に、薄いチラシが風で吹かれてきた。
なんとなく、なんとなくそれを読んでみると‥‥
「バイト募集中! 時給5000円の高額バイト!!
仕事内容は地球を征服する計画を共に立てるだけでおっけ〜〜!!
電話番号は‥‥」
そう、書いてあったの。
私は、すぐにそのチラシに書いてあった電話番号に連絡した。
ずっと、めそめそしているわけにもいかないしね。
電話には、男の人の声が出た。 妙な侍口調の男だ。
「名前は?」
「メグミですっ。 つい最近まで、レースクーンを。」
「なななな、なんとっ!? お主、メグミ殿であるかッ!?」
‥‥その時だった‥‥
この間の、地球を賭けたレース。
その時私が応援していたチームの一人の男、エヌ・ジンの声だと思い出したのは。
「まさか、まさかウチで働いてくれるのかッ!!」
「は、はあ‥‥。 そうですけど。」
「おお! きっとコルテックス殿も喜びますぞ!!」
「‥‥コルテックス?」
再び、記憶を過去へといざなった言葉。「コルテックス」‥‥。
そうだ、あのときの黄色いヒゲ親父だ。
「‥‥アイツも、あなたたちの所にいるの?」
私はなんとなく聞いてみる。
答えはわかっていたはずなのに。
「もちろんですぞ! 今回、バイトを募集しようと言い出したのもコルテックス殿ゆえ。」
「‥‥そう、だったの。」
複雑な心境だった。
自らの心の傷を癒すためにはじめようと思った仕事が、まさかあの憎きヒゲ親父の職場だったなんてね‥‥。
正直、良い気分でも悪い気分でもない。
悪い気分ではないのは、恐らく貰えるお金が高額だったためだろう。
たくさんお金がもらえるのなら、多少は我慢しよう。 ‥‥そう、言い聞かせた。
「では、明日面接に来てくだされ。 場所は宇宙ステーションなり。」
「うちゅう‥‥すてーしょん?」
「は。では、アリアシティのモルニア街に来てくだされ。 そこで、拙者がお主を待つ。」
「はい‥‥わかりました。それでは。」
「うム。」
‥‥私は、電話を切った。
次の日、私はアリアシティに来た。
都会だということもあって、多くの人でにぎわっていた。
「この中であの人を探すのは難しそうね‥‥。」
と思っていたのだが、ミサイルが頭に刺さった男がロケットを携えてつっ立っていた。
(ちょっと、目立ちすぎじゃない‥‥。)
私は呆れながらもエヌ・ジンの元に向かう。
「ム。来てくれたな。 では、このロケットの中に乗り込んでくだされ。」
「あの、宇宙って‥‥」
本 気 だ っ た の か ‥ ‥ 。
レース1、終幕。
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